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Photo by
nekonosara
ポケットの中の幸せ
幸せというのは
たぶん
予期せぬタイミングで見つかるものなんだ。
ポケットの中の飴玉みたいにね。
意識して探すと見つからない。
でも、手を無造作に突っ込んだとき
そこにひっそりと存在しているのを感じる。
それが幸せの本質なんだと思う。
たとえば、朝
通勤途中にふと耳に入ったラジオから
懐かしい曲が流れてきたとしよう。
その瞬間
目の前の景色が少しだけ変わる気がする。
子どもの頃の夏休みや
昔好きだった人の笑顔が一瞬よぎる。
そんな風にして、僕らの心は少しずつ温かくなる。
また、雨上がりの道で見つけた小さな虹。
それはほんの数秒で消えてしまうかもしれないけれど
見つけた瞬間
世界が自分の味方をしてくれているような気分になる。
誰かが意図してくれたわけじゃない。
ただそこにあった。
でも、それが僕には十分だった。
あるいは
何気なく食べた食事が
妙に美味しく感じられるときがある。
「これ、美味しいな」と思った瞬間
世界がほんの少しだけ鮮やかになる。
お風呂で
「ああ、今日も何とか無事に終わった」と思う瞬間。
どちらもごく平凡な出来事だけど
それは確かに僕を支えている。
幸せというのは、特別なものじゃない。
それは日常の裂け目の中から
ふいに顔を出す。
僕らはただ
その裂け目を見逃さないようにすればいい。
そして、その小さな幸せを拾い上げること。
それが僕たちにできる唯一のことなのかもしれない。
ポケットに手を入れてみてほしい。
そこに飴玉があるかもしれない。
それがどんな味かはわからないけれど
味わう価値はきっとあるはずだ。