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さまよえるオランダ人@新国立劇場

リヒャルト・ワーグナー
題名役のエフゲニー・ニキティンの気管支炎で、河野鉄平が代役
流石に声量が不足している印象はあるが、頑張っていたということか

パンフレットを瞥見した感じでは、ラストにはゼンタとオランダ人が結ばれてハッピーエンドだと勝手に思い込んでいたので、ゼンタが彷徨船と共に沈んでいってしまったのには驚いた
確かに、ハッピーエンドではソープオペラになってしまうので、これは納得

題名役はオランダ人だが、明らかに主役はゼンタになるだろう
想像上の存在に強く共感し、(その人を、さらに世界を)救済する人間として自分を意味づけることが、生きることの縁になっている
他の女性が恋人を待つという比較的受動であることとの違いも提起できるだろう
それを全うするには、ラストシーンで方向船と共に沈む必要がある
こう書くと、ゼンタはとても悲劇的に見えるが、舞台では、ゼンタを演じたエリザベート・ストリッドはコメディエンヌの才能もあるのではないかと思わせる演技で軽みを的確につくってもいた

三幕目では彷徨船が常に背景にあり、その空虚感と実は存在していた人?霊?という想像力を刺激する舞台が作られていた
また、オランダ人の絵を収めた額縁が落ちるシーンも実は相当大きな意味を持っているだろう
舞台美術としては、もう少し工夫があるともっと楽しめたのではないか、せっかくの(生産としての)糸車と(移動としての)舵輪の相似形を十分には活かしきていない印象でもある
その意味では、舞台美術に複義性、多義性が弱いということもできそう

専門に引きつければ、故郷なきオランダ人と帰郷を喜ぶ乗組員という対照は、地域という視点からさまざまに考えることができる

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