KIRA Takayuki

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吉良貴之@法哲学  ウェブサイト:http://jj57010.web.fc2.com  ツイッター:https://twitter.com/tkira26

最近の記事

認識論の最近の重要そうな著作

最近10年ぐらいの著書で、私が確認できたもの。なんらかの規範的関心が入っていそうなものが多いです。たぶん変なのも混じっています。 科学哲学系はあまり入っていません。 太字は特に重要そうな気がするもの。 論文は Episteme や Social Epistemology などから適宜。 【追記】自分の勉強のためのメモです。ブックガイドではありません。 【重要そうな人物の著作】Ernest Sosa  Sosa, E. (2021). Epistemic Expla

    • あなたの顔はみんなのもの

      顔認証 AI についての本です。 Hill, K. (2024). Your Face Belongs to Us: A Tale of AI, a Secretive Startup, and the End of Privacy. Simon & Schuster. Clearview AI の CEO の Hoan Ton-That の個人史と、顔認証技術の社会史が交互に語られながらやがてひとつにまとまる。村上春樹の小説みたいな書き方で、とても面白いです。 Hoa

      • セオドゥールー&ロイ『行政入門』

        Theodoulou, S. Z. & Roy, R. K. (2016). Public Administration: A Very Short Introduction. Oxford UP. セオドゥールー&ロイ『行政入門』(石見豊訳、芦書房、2024年10月予定) せっかく翻訳が出るみたいだから先に読んでみよう。 「行政」は古代文明からずっとあったが、本書ではウェストファリア体制以降の近代行政を見ていく。国民国家という枠のもと、発展する代議制民主主義との緊張関

        • 戦争の比喩で語ってはならない

          ウィズコロナ時代のケアの倫理についての本です。オープンアクセス。 Krasny, E. (2023). Living with an Infected Planet: COVID-19, Feminism, and the Global Frontline of Care. transcript Verlag. イントロ: Covid-19 対応が戦争の比喩で語られがちだったことで、ケアがそれに従属する「銃後」の営みとされることの問題が述べられる。 戦争=緊急事態=一時

        認識論の最近の重要そうな著作

          クィア功利主義

          ベンサム研究ジャーナルの Revue d’études benthamiennes の最新25号(2024)は「クィア功利主義」が特集テーマです。 ベンサム全集(The Collected Works of Jeremy Bentham)のうち、セクシュアリティ論を集めた「不規則な性について、そして性的道徳についての他の文章( Of Sexual Irregularities, and Other Writings On Sexual Morality)」が 2014 年に

          クィア功利主義

          2010年以降の一般法理学/法概念論の重要著作

          あれがないじゃないか!と思った人は自分で勝手に読もうな。 単独の著作Shapiro, S. (2011). Legality. HUP.  → 法の計画理論。 Marmor, A. (2011). Philosophy of Law. Princeton UP. → 森村進監訳『現代法哲学入門』(勁草書房、2023年) Gardner, J. (2012). Law as a Leap of Faith: Essays on Law in General. OUP. →

          2010年以降の一般法理学/法概念論の重要著作

          札幌高裁・同性婚判決(2024.3.14)

          札幌高裁判決(札幌高判令和6年3月14日)についてのメモ。 判決文はこちらから:[PDF] https://www.call4.jp/file/pdf/202403/04097ed5db19a01e5f19d1c99857d8be.pdf ① 判決の特徴  本判決によると、憲法24条1項は「人と人との間の婚姻の自由を定めたものであって、同性間の婚姻についても、同程度に保障する趣旨(19頁、強調付加、以下同様)」であり、2項とともに立法裁量に対する統制規範であると解され、

          札幌高裁・同性婚判決(2024.3.14)

          総特集=監視をめぐる法と倫理

          Ball, K., Haggerty, K., & Lyon, D. (Eds.). (2012). Routledge Handbook of Surveillance Studies. Routledge. は、やや古くなったが、このあたりの問題群を一望するのに便利だと思う。 ほか、いろいろ。こういう分野はあまり古いのは使いにくいので、基本的にはだいたいここ数年ぐらいのもの。タイトルと目次を見ただけのものもあるので、学術的にあやしいものもまじっていると思う。

          総特集=監視をめぐる法と倫理

          東浩紀『訂正可能性の哲学』

          つい昨日に発売された、東浩紀『訂正可能性の哲学』(ゲンロン、2023年8月)と『観光客の哲学 増補版』(ゲンロン、2023年6月)を読んだ。 私はこの著者のよい読者ではない。『訂正可能性の哲学』もよい本だと思えなかった。ルソー、プラトン、ポパー、ウィトゲンシュタイン、アーレント……といった有名な哲学者の代表作をいきなり読んで(つまり近年の研究などはほとんど参照せず)、過度に単純化しながら連想ゲームで「ゆるいつながり」を作っていく。確かに読みやすいし、なるほどこういうふうに読

          東浩紀『訂正可能性の哲学』

          ガブリエル・ブレア『射精責任』メモ

           Gabrielle Blair. 2022. Ejaculate Responsibly: A Whole New Way to Think About Abortion. Workman Publishing Company. という本の翻訳が『射精責任』と題されて、太田出版から2023年7月21日に発売されるとのことである。  インパクトのあるタイトルと、いくぶんセンセーショナルな宣伝もあってか、発売前から話題の書となっているようである。ただ、私としてはあまり期待が加

          ガブリエル・ブレア『射精責任』メモ

          科学的助言と認識的不正義

          科学技術の哲学と歴史の国際連合 (IUHPST) が2年に1回出している、科学技術の哲学と歴史・論文賞を、ケンブリッジの院生の Ahmad Elabbar 氏の 「アセスメントのキュレーター的見方と科学的助言の倫理:意思決定の自律から分配的認識的正義へ(The curatorial view of assessment and the ethics of scientific advice: Beyond decisional autonomy towards distrib

          科学的助言と認識的不正義

          本を送る

           フランスのいわゆる Darcos 法(これ自体は2年前に制定)のいろいろ細かいところが議会を通ったようで、10月からフランスでは35ユーロ(約5000円)以下の本の配送料を3ユーロ以上とすることになった。 日本語で読める記事だと、少し古いがこちらなど。  フランスでは現在、無料配送はダメということになっているが、アマゾンはそこで送料1セントというナメたことをしていたので、抜け道を防いだことになる。これは既存書店組合からの突き上げによるアマゾン潰しで、資本主義に反する暴挙

          ゴッホとトマトスープ

          これ関係はもう報道すんな!と不愉快に思ってらっしゃる方も多そうですが、例の、名画にスープをかけたりする抗議活動について、しっかりした分析がそこそこ出てきた。 「ゴッホを汚すのが気候によいのか?」L’Obs, 10/29, 2022. なんらかの社会的な抗議活動の目的で美術品を攻撃するのは昔からあるやり方で、いや芸術作品を傷つけてどうするんだ、悪い企業とかを直接批判したらどうなのか、という反発が当然出てくる。しかし、実際に悪い企業に対して行動してもかえって普通だと思われて報

          ゴッホとトマトスープ

          現代イタリア法哲学と恐怖新聞

          1. イタリア法哲学の存在感 Torben Spaak & Patricia Mindus, eds., 𝙏𝙝𝙚 𝘾𝙖𝙢𝙗𝙧𝙞𝙙𝙜𝙚 𝘾𝙤𝙢𝙥𝙖𝙣𝙞𝙤𝙣 𝙩𝙤 𝙇𝙚𝙜𝙖𝙡 𝙋𝙤𝙨𝙞𝙩𝙞𝙫𝙞𝙨𝙢, CUP, 2021 という、法実証主義の辞書みたいな論文集はいろんな国の法実証主義の議論状況をまとめていて有益なんですが、そのなかにイタリアのもある。現代イタリア法哲学というのは法実証主義/リーガルリアリズム系統の議論ではジェノヴァ学派とかボローニャ学派とかずっと存在感があって、最

          現代イタリア法哲学と恐怖新聞

          Cultural Typhoon 2022

          [English follows Japanese.] 先週末はカルチュラル・スタディーズの学会であるカルチュラル・タイフーンに出ていました。 カルチュラル・タイフーンは興味は持っていたんですが、なんとなく日程が合わなかったりして今回が初めてでした。フェミニズム特集ということでテーマ的にもちょうどよかったです。どれも興味深い発表でしたが、カルチュラル・スタディーズならではの、理論だけではなく具体的な作品=文化的表象を用いて語ることの強みを感じました。学会の雰囲気としても、

          Cultural Typhoon 2022

          砂漠の赤信号

          Noam Gur (2012) "Actions, Attitudes, and the Obligation to Obey the Law," 𝘛𝘩𝘦 𝘑𝘰𝘶𝘳𝘯𝘢𝘭 𝘰𝘧 𝘗𝘰𝘭𝘪𝘵𝘪𝘤𝘢𝘭 𝘗𝘩𝘪𝘭𝘰𝘴𝘰𝘱𝘩𝘺 21(3) https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jopp.12000 遵法義務論について、誰もいない砂漠の赤信号でどうかと問うもの。ヘッダーの画像はこちらから。 遵法義務というのはそのまま「法に

          砂漠の赤信号