【中学受験】開成、聖光学院結果
2月3日の朝、僕はワクワクしていた。
だって今日は午前中に聖光学院中学、午後に開成中学の発表があるからだ。
自信は、はっきり言って、ある。
開成の問題も理科以外は簡単だったし、聖光学院の問題も問題なくできた。今までで一番の手ごたえだ。
悩みは2校とも合格したら、どちらに進学するかどうかだけだ。
昨日は発表のことを考えて夜からソワソワしていた。前日は勉強にも身が入らず、夜もあまり寝られなかった。お母さんは4日の聖光第2回テストに備えて勉強しなさいなんて言ってくるけど、僕は2回目のことなんて考えなくていいと思っている。だってどちらの学校も自信があるからだ。
聖光学院合格発表の朝、お母さんがパソコンの前で合否を確認する。僕も後ろから画面をのぞき込んだ。
僕の受験番号と生年月日を入力したら、「不合格」の文字が見えた。
そんな馬鹿なはずはない。そもそも聖光学院は実力相応校だし、いつもの力でできた自信もある。
「お母さん、なにか間違ってない?」
「そんなことないよ。あなたも後ろで見てたでしょ」
僕はお母さんに変わって、再度パソコンに向かって操作した。
でも何度やっても僕の目に映るのは「不合格」の文字だった。
僕はしばらくのあいだ放心しながら、画面をぼんやりと眺めていた。
僕は目の前の事実が信じられなかった。
「これなにかの間違いだよ。だって僕普通にできたもん」
「そんなこと言っても、結果はあなたも見たでしょ」
腑に落ちない気持ちのまま開成中学の発表の時間になった。
今度は僕自身が受験番号と生年月日を入力して確認した。
結果は不合格だった。
おかしい。なにか間違ってる。
だって問題はできたし、算数も今までより簡単にできた。そんな馬鹿なことがあるはずない。これは夢なんだろうか。
でもいくら考えても、夢じゃないし、2校とも不合格だったという事実が重くのしかかってくる。
目の前が真っ暗になった。知らないうちに涙がとめどなく流れてくる。
なんで? こんなわけないじゃん。
時間が経って、僕は落ち着きを取り戻した。
もしかしたら僕は受験を少し甘く見ていたんじゃないかって。
問題を見たときに「意外に簡単だ」と思った。そのとたんに、気持ちが少し緩んだんじゃないかって。
考えてみれば思い当たるふしはあった。算数もいつもより見直しをしていなかったし、国語の解答ももっと推敲できたはず。
たぶん「これでいいや」って感じで解答を書いたと思う。
心の中に「なんだ簡単じゃん」って気持ちが芽生え、「絶対に合格してやる」から「楽勝だよ」って気持ちが強くなったんじゃないか、って。
それに4日はどこに遊びに行こうって、そればかり考えていたんじゃないか、って。
お父さんはよく言っていた。
「君の成績が一番悪くなる時ってどういう時だかわかる?」
「わからない。問題が難しい時?」
お父さんは静かに首を振った。
「違うよ。問題が難しい時でも、君はすごくいい時はある。それは君が一所懸命問題を考えるからだ」
「じゃあどんなとき?」
「それは君が慢心したときだよ。テストは簡単だって思って、深く考えないで解答を書いたとき。君の場合、それが一番怖い」
まさに今回はそのパターンじゃなかったのかって。
これが最後のテストなのに、僕はベストを尽くしていなかった。ベストを尽くそうと思いながらも、合格してやるという執念が足りなかった。だから、僕の気づかないところでケアレスミスをしていたかもしれない。
しばらくして僕は覚悟した。
まだ明日の聖光学院のリベンジがある。明日こそは悔いのないように、全力で問題に当たろう。僕は第2回目の過去問題にとりかかった。
翌朝。
泣いても笑っても、これで中学受験は終わりだ。
お父さんに電話したら、「6年間、君がやったことのすべてを吐き出してきなさい」と言われた。
絶対にリベンジしてやる。
決意を胸に僕はホテルをあとにした。
※あとがき
妻が言うには、今日だけは今までと違って、必死の形相で試験会場に向かって行ったそうです。
小説ならばこれでハッピーエンドとなるところですが、現実はそんなに甘くありません。正直、1日、2日で決めるべきだったのに、それを決めきれなかった代償は払わないといけないかなと。
ただ、現実はそんなに甘くないということを学べただけで、今回の関東受験は成功だったかもしれません。
たとえ開成に合格したとして、彼がこのまま順風満帆な受験人生を終えたとしても、心の中に巣食った「慢心」の文字はいつしか膨れ上がり、きっとどこかで仇をなすに決まっているからです。
彼のポジモンは長所でありながらも、欠点でもある。
今後の彼の人生において、自分のポジモンとうまく付き合っていくことができたらなと思えた関東受験でした。
あ、まだ終わってないか。(≧▽≦)
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