悲嘆

「おもたい　かなしみ」
おもたい　かなしみが　さえわたるとき
さやかにも　かなしみは　ちから
みよ、かなしみの　つらぬくちから
かなしみは　よろこびを
怒り、なげきをも　つらぬいて　もえさかる
かなしみこそ
すみわたりたる　すだまとも　生くるか
　　　　　　　八木重吉

日本で生きている
多くの人が生きている

この国をすみかとして
喜怒哀楽の中
生きている

悲しいかな
その
多くの
いろいろな国から
いろいろな地域から
集まった人たちが
虐げられ
蔑視され
いわれなき差別を受けている

この国の差別のを先導しているのは
悲しいかな
この国の政治であり
この国の法律だ。

そして
この国の政治を司る人間を選ぶ権利は
この国に国籍がある人間だけだ

だから
悲しいかな
日本における平等は
しょせん
日本人だけしかみていない

差別を受けている人の声を聞かない
差別を受けている人を見ない
それが
日本の政治のあり方だ

日本人以外の多くの人が暮らすこの国で
日本人だけで
差別のない平等な世界など作れるわけがない

日本には差別はない
などと寝言を言う人もいる

部落差別はすでになくなった
などと寝言をいう人もいる

LGBTへの差別も
彼ら彼女らの被害妄想だ
などと寝言をいう人もいる

この思考のもち方は
非常に危険であり
自らの首を絞めることともなる

弱者は
少数派は
いないことにする

でも
みな弱者だ
みな少数者だ

そう思わないのは
そう思えないのは
すでに
強者に取り込まれ
何も考えられなくなっている
思考停止状態にある

人間は
個では生きられない

だから
互いに
弱く
そして
どこまでも
孤独であることを
しっかり認めて生きていきたい

いつまでも
日本という幻想
日本という妄想
そこから目覚め
視野を広げ
目覚めた上で
まともな社会を作っていこう

そんな
思いを支えるのは
現状への憂いであり
現状への悲しみ