
脳の刺激は年齢ではなく学習能力に依存する:個別化アプローチが求められる理由 ローザンヌ連邦工科大学(EPFL)
近年、脳の非侵襲的な刺激技術が注目されていますが、研究によるとその効果は年齢ではなく個々の学習能力に依存することが明らかになりました。スイスのEPFLで行われた研究では、特にモーター学習において、学習が効率的でない人々は脳刺激の効果を最大限に引き出せることが示されています。一方、学習能力が最適な人々は刺激が逆効果をもたらす場合もあります。これにより、神経リハビリテーションにおいて個別のアプローチの重要性が浮き彫りになりました。

脳の刺激技術は、認知機能や運動機能の向上を目指したリハビリテーションで注目を集めています。特に、アノード型経頭蓋直流刺激(atDCS)という技術は、低電流を頭皮に流すことで神経活動を調整し、運動技能の学習に効果を示すとされています。しかし、これまでの研究では、なぜ一部の人々がこの技術で効果を得られる一方で、他の人々は効果を感じられないのか、その理由は不明確でした。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のフリードヘルム・フンメル教授率いる研究チームは、脳刺激の効果に影響を与える要因を探るべく、新たな研究を行いました。40名の参加者(中年層と高齢層)を対象に、運動課題を行いながらatDCSを施し、その効果を分析した結果、脳刺激の効果は年齢に関係なく、個人の学習能力に依存することが分かりました。
具体的には、学習が効率的でない「サブオプティマル」な学習者は、脳刺激を受けることで精度の向上が加速しました。これに対して、最初から効率的に学習できる「オプティマル」な学習者は、脳刺激を受けてもその効果は限定的で、場合によっては負の効果が見られることもありました。この結果から、脳刺激は能力を高めるのではなく、むしろ失われたスキルを回復させるための「修復的」な役割を果たすことが示唆されます。
さらに、研究チームは機械学習を用いて、参加者の初期学習能力を評価し、それに基づいて脳刺激が効果的かどうかを予測しました。これにより、脳刺激が最も効果を発揮する対象が明確になり、個別化された治療法の開発が進むことが期待されます。
将来的には、脳刺激を用いた治療法が、個々の患者の学習能力に基づいて調整されるようになり、より効果的な神経リハビリテーションが実現するでしょう。特に脳卒中や外傷後のリハビリテーションでは、このアプローチが重要な役割を果たすことが予想されます。
この研究結果は、脳刺激技術の将来において、年齢に依存しない個別化された治療法の必要性を強調しています。
詳細内容は、EPFLが提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7