火星の有機物質が生命の構成要素の起源を明らかにする コペンハーゲン大学と東京工業大学
NASAの探査車キュリオシティが火星で発見した新たな有機物質が、生命の基盤となる分子の起源に関する重要な証拠を提供しました。コペンハーゲン大学と東京工業大学の研究者によるこの発見は、12年前に提唱された理論を支持するものであり、生命の起源を理解する上で大きな手がかりとなります。
NASAのキュリオシティ探査車は、火星のクレーターで土壌サンプルを採取し、分析を続けています。最近、この探査車は火星の堆積有機物を発見しました。この有機物は、特定の炭素同位体比を持ち、地球上で同様の物質が見つかると微生物の存在を示す可能性がある一方、非生物的な化学プロセスの結果でもある可能性があります。
この発見により、研究者たちは大きな興奮を示しています。特に、コペンハーゲン大学の化学教授であるマシュー・ジョンソンは、この発見が、火星の大気での二酸化炭素(CO₂)の分解とその後の複雑な分子の合成に関する彼の理論を裏付ける「決定的な証拠」となると述べています。
ジョンソン教授らの理論では、火星の大気中のCO₂が太陽光(紫外線)によって分解され、一酸化炭素(CO)が生成され、さらに複雑な有機分子へと変化したとされています。このプロセスは「光解離」と呼ばれ、火星に有機物質を供給したと考えられます。これにより、生命の構成要素となる炭素ベースの分子が形成されたのです。
12年前、ジョンソン教授と彼の同僚たちは、量子力学的シミュレーションを用いて、CO₂の光解離がCO₂の同位体比にどのように影響するかを予測しました。これにより、CO₂が光解離した後の炭素同位体比の特有の指紋を特定することができました。この指紋の一つは、以前に発見された火星の別のサンプルでも確認されていました。
今回の発見により、地球上のアラン・ヒルズ隕石と火星の有機物質との間に共通の起源があることが示されました。アラン・ヒルズ隕石は、かつて火星から地球に飛来したもので、内部にはCO₂の同位体比が予測と一致する炭酸塩鉱物が含まれています。これは、ジョンソン教授らの理論を確認するための欠けていたパズルのピースでした。
研究者たちは、同様の同位体の証拠が地球でも見つかることを期待しています。しかし、地球の地質活動の影響により、火星ほど明確な証拠を見つけるのは困難かもしれません。地球の表面は、火星よりもはるかに活発で変化が激しいため、同じような証拠を見つけるのはチャレンジとなります。
ジョンソン教授は、「CO₂の光解離は、地球上での生命の出現にとっても前提条件だったと考えられますが、地球ではまだこの決定的な証拠を見つけることができていません。しかし、火星での発見は、かつて非常に似ていた二つの惑星の一つで、このプロセスが起こっていたことを示しています」と述べています。
この研究は、生命の起源に関する理解を深める一歩となり、火星と地球の進化に関する新たな洞察を提供します。
詳細内容は、コペンハーゲン大学が提供する元記事を参照してください。
【引用元】
【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7