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遺伝子の革命、4塩基RNAで非標準アミノ酸を組み込む新手法 スクリップス研究所

従来、たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されるとされていましたが、スクリップス研究所の科学者チームは、新しい遺伝子コードを用いることで、この限界を超える画期的な技術を開発しました。通常、RNAは3つの塩基対(コドン)で1つのアミノ酸を指定しますが、研究者たちは4つの塩基対を利用することで、非標準アミノ酸(non-canonical amino acids)をたんぱく質に組み込む方法を開拓しました。この技術により、従来の方法よりも簡単に、より多様なアミノ酸をたんぱく質の特定の位置に導入できるようになり、バイオエンジニアリングや医薬品開発における新しい可能性が広がっています。

新技術の核となるのは、RNAのコドンが4つの塩基対で形成されるという点です。通常の生物学では、3つの塩基対が1つのアミノ酸に対応しますが、これでは組み合わせに限界があります。しかし、4塩基のコドンを使用することで、新しいアミノ酸をコードできるスペースが増え、たんぱく質の構造を自由に設計できるようになります。

従来の方法では、たんぱく質に新しいアミノ酸を導入するために、細胞全体のゲノムを再設計し、特定のコドンを別のアミノ酸に置き換える必要がありました。しかし、この方法には膨大なリソースと時間がかかり、ゲノムの安定性に悪影響を与える可能性もありました。新たな手法では、遺伝子の特定部分のみを変更することで、効率的に非標準アミノ酸を導入でき、他のたんぱく質に影響を与える心配がありません。

さらに、この新技術は、既存のたんぱく質を改変するだけでなく、新しいたんぱく質や分子を創り出すことも可能にします。特に、研究チームは、100種類以上の新しい「環状ペプチド」(macrocycles)を作成し、その中には最大で3つの非標準アミノ酸が組み込まれています。これらの環状ペプチドは、自然界で見られる生理活性分子に似ており、医薬品開発などに大きな可能性を秘めています。

この技術の最大の強みは、その「簡便さ」です。ゲノム全体の変更を必要とせず、1つの遺伝子のみを変更するだけで、簡単に多様なたんぱく質を作成できることから、幅広い分野での応用が期待されています。医薬品だけでなく、製造や化学センシングの分野でもこの技術は大きな可能性を秘めています。

研究を主導したスクリップス研究所のアーメド・バドラン博士は、「私たちの技術は、既存のたんぱく質を再設計したり、新しいたんぱく質を創り出す際に非常に強力なツールとなるでしょう。この手法を用いて、さまざまな産業や医療分野で新しい技術革新が起こることを期待しています」とコメントしています。

バドラン博士とそのチームが開発したこの技術は、たんぱく質の構造や機能に新たな次元を加え、バイオテクノロジーの未来に新しい道を開くものであり、今後の展開が注目されます。

詳細内容は、スクリップス研究所が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7

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