見出し画像

グラフェンで発見された新たなトポロジカル電子結晶の世界 ブリティッシュコロンビア大学(UBC)

ブリティッシュコロンビア大学(UBC)、ワシントン大学、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者たちは、特別に設計されたグラフェン構造内で新しい種類の量子状態を発見したと報告しました。この研究成果は、科学誌『Nature』に掲載され、ツイスト二重層・三重層グラフェンにおけるトポロジカル電子結晶の発見が詳しく述べられています。

グラフェンは、炭素原子が蜂の巣状に配列した二次元材料で、その電子的特性は、炭素原子間で電子がどのように移動するかによって決まります。通常の導体である銅と似た性質を持つグラフェンですが、2枚のグラフェンフレークをわずかにねじって積み重ねると、モアレパターンと呼ばれる幾何学的干渉効果が生じます。このパターンにより、電子の移動速度が大幅に低下し、時には電子の動きにねじれが生じることがあります。

今回の研究で注目すべき発見は、UBCの学部生であるRuiheng Su氏が、ワシントン大学のMatthew Yankowitz教授の研究室でポスドク研究員を務めるDacen Waters博士が準備したツイストグラフェンサンプルを研究している際に見つけたものです。Su氏は、グラフェン内の電子が完全に秩序だった配列に凍結し、まるでバレリーナがその場で優雅にピルエットを行うかのように一斉に回転する独特の構造を発見しました。この同期した回転により、サンプルの内部は絶縁性を保ちながら、エッジ部分では電流が抵抗なく流れるという驚くべき現象が生じます。

さらに特筆すべきは、エッジを流れる電流の量が、プランク定数と電子の電荷という2つの基本定数の比によって正確に決まる点です。この値の正確さは、トポロジーと呼ばれる電子結晶の特性によって保証されます。トポロジーとは、物体が多少の変形を受けても変わらない性質を指します。例えば、ドーナツは切らずにプレッツェルの形に変形することはできません。同様に、2次元電子結晶の境界を循環する電子の流れも、その周囲の環境による乱れに影響されません。

このトポロジカル電子結晶の特性は、従来のウィグナー結晶では見られなかった逆説的な挙動を示します。電子が秩序だった配列に凍結して結晶を形成するにもかかわらず、その境界に沿って電気を伝導することができるのです。

日常生活でのトポロジーの例として、メビウスの帯が挙げられます。紙の帯を一度ひねって端をつなげると、表裏の区別がない一方通行の面ができます。この帯をどのように操作しても、切断しない限り元のループに戻すことはできません。電子結晶内の電子の回転は、このメビウスの帯のねじれに似ており、これまでのウィグナー結晶では見られなかった特性をもたらします。

今回の発見は、量子物質の研究に新たな視点を提供し、将来的な電子デバイスの設計や量子コンピューティングの発展に寄与する可能性があります。グラフェンの特性をさらに深く理解することで、次世代の技術革新への道が開かれることが期待されます。

詳細内容は、ブリティッシュコロンビア大学が提供する元記事を参照してください。

【引用元】

【読み上げ】
VOICEVOX 四国めたん/No.7


いいなと思ったら応援しよう!