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マイケルの命日に、19歳の私が思うこと

マイケルが好きだ。
彼の音楽も、ダンスも、世界観も。
世間からどう言われようと、揺るがなかった彼の信念は、
今も、これからも、私たちの中で生き続けるだろう。

物心ついた時から、マイケルの音楽は身近にあった。
80年代に青春時代を過ごした両親の影響を受け、
マイケルをはじめ、80年代の洋楽は
ポップスやロックからヘビメタまで
私のなかでは絶対的なカリスマだ。

なかでもマイケルは格別だった。
7歳の時、彼の訃報を聞いた。
その日から父の膝の上に乗り、YouTubeで彼のダンスを観るのが日課になった。
YouTubeの画面で、華麗なステップを踏むマイケルは、
不思議なほどに美しく、人間でないように思えた。

当時のお気に入りは、『Beat It』と『Black or White』のShort Film(略してSF。いわゆるPVだが、彼は短い映画を作るつもりで制作していたそうなので、SFと呼ぶ)だった。
『Beat It』の、マイケルの着ているTシャツが変わるのが不思議だったし、
イカツイ顔をしたお兄さんたちが、急に喧嘩をやめて踊りだすのも
信じられないくらいかっこよかった。
『Black or White』の、モーフィング技術をつかったシーンも大好きだった。
マイケルが世界各地の名所のセットで踊るのも面白かった。
その時は、特に気にしてなかったけど、
彼のSFには様々なメッセージが込められていた。

例えば、『Black or White』
炎のなかをかき分けるマイケルの横に映るのは、
KKK(Ku Klux Klan)の姿。
白い服と被り物を身につける彼らは、シーツ(sheets)と呼ばれるそうだ。
マイケルも同曲のなかで、
“I ain’t scared of no sheets”
と、歌っている。
シーツなんて恐れない、と力強く叫ぶマイケルは、
どんな思いでこの歌詞を綴ったのだろうか。

差別だとか、戦争だとか、貧困だとか。
世界にはそういう問題が根強く残っているし、
今だって、多くの人が犠牲になっている。
子供がそれらを学ぶのはなかなか難しいが、
マイケルの音楽のおかけで、
私は早くから問題の背景と現実を知る機会を得ていた。

アメリカに留学した時は、
「マイケルが好き!」と言ってムーンウォークを真似れば、
すぐにたくさんの友達ができた。

英語の勉強がダルい時は、
マイケルのインタビューを見たり歌詞を和訳したりしていた。
想像以上に大人な歌詞に、
思わず赤面したのも良い思い出だ。

将来のことに悩んだ時は、
『Man in the Mirror』の
”If you wanna make the world a better place, take a look at yourself and then make a change.”
という歌詞を思い出した。
この言葉は私の座右の銘にしている。
※余談にはなるが、1988年イギリス、ウェンブリースタジアムで撮影されたライブDVDでの同曲パフォーマンスはとても素晴らしい。歌詞にかけて鏡を使う演出なども見もの。

彼の音楽がきっかけで、大切な恋人もできた。
『I Just Can’t Stop Loving You』を聴きながら、
恋人を想った。

どんな時もそばにあった彼の音楽は、
私の人生を語る上でなくてはならないものだ。
彼の晩年は決して恵まれたものではなく、
容姿に対する世間からの誹謗中傷、名声が故の裁判沙汰などに悩まされた。
それでも、信念を曲げずにThis Is Itのツアーを行うと発表した彼は、
世間のイメージとは異なり、強い心を持った人だったのだと思う。
ストイックで完璧主義的な一面と、
困っている人に気をかける優しさを持ち合わせた、
真の意味での強い人だ。

彼が亡くなって13年。
私は今年、20歳になる。
彼の音楽に目覚めたのは、彼の死後だった。
両親のように、彼の新しいアルバムを心待ちにしたり、
ライブに行けるかもしれないと夢見たりしたかった。
それでも。
レコードがiPhoneに代わっても。
ヘッドホンがAirPodsに代わっても。
彼の声は変わらず私の心を揺さぶり、熱くする。

世界は日々進化しつつも、関係性の複雑さは増し、
今この瞬間にも、不条理に命を落とす人がいる。
そんな時代だからこそ。
マイケルの音楽は、いっそう輝きを増すのではないか。

今日も私は、彼の世界の海に飛び込むのだ。


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