隠れた「自分たちは特別」という思い
これまでに何度か授業の感想を読んでいて,もやもやする感覚に陥ったことがあります。
たとえば
「こんなことを信じているなんて,日本人は〇〇だからでしょうか」
といった感想を目にした時です。
だいたい〇〇の中にはネガティブなことが入るのです。ですので,日本人がこんなことを信じているなんてこんなよくない傾向があるからではないか,という観点でこういった感想が書かれているわけです。
人間って
しかし,授業をしている時に自分の頭の中にあるのは「人間ってみなこういう傾向があるから気をつけましょう」といったことなのです。
特に「日本人が」ということは授業で一言も触れていません。
想定しているのは世界中の人に共通する特徴についてです。
ところが,学生に伝わる時には「人間全体」が「日本人」に置き換わって伝わってしまう,ということがよく起きるようなのです。
授業の感想でそういうのを見つけた時には,次回の授業でできるだけ訂正していきます。日本人のことだけを言っているわけではないのですよ,と。
こういう意見を目にすると,全体の話を自分の所属するグループだけの話にしてしまうというのは何なんだろうか,と考えてしまうことがあります。
宇宙人
ずいぶん前のことですが,こういう感想をもらったこともあります。何の授業の回だったかも忘れてしまったので前後の文脈はわからないのですが。パソコンを検索したら,当時のQ & Aが出てきました(10数年前,私は毎回の授業で集めた質問について回答を書き,印刷して配っていたのです)。
多分この授業では話題としていろいろな疑似科学について取り上げて,否定的な発言をしていったのでしょう。その授業の後にある学生が,次のように感想に書いてきたのです。
「UFOは宇宙人の乗り物ではないと言われますが,それは宇宙で人間がいちばんすごいと思い込んでいる人の考えであり,人間より優れた生命体が存在すると信じている私にとってはあり得ない発言です」
教室にはいろいろな考え方をする学生がいます。どのような意見であっても,学生の意見を見聞きすることは,とても勉強になるものです。
さて当時,この質問に対してどう答えたのかなと思ったのですが,次のように答えていました。
生命を「優劣」で判断しようとしているのはあなたではないですか?私は生命に「優劣」など存在するとは考えていません。たとえば,「繁栄している(数が多く,子孫を残す)」ことを「優れている」と考えるのであれば,地球上で最も優れた生命体は「バクテリア」です。それから,宇宙の中に知的生命体が存在する星があったとして,その知的生命体がわざわざ遠い道のりを経て地球を見にやって来ている,と考えることこそ,「人類が優れている」という思想の表れではないでしょうか。
ああ,回答のしかたが若いですね。
学生が聞いてもいないことをこちらで勝手に想像して,あえてずらして回答しているところもずるいと思います。今ならもう少し悪い印象を与えないように回答します……私も大人になりました。
根強い
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