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『仕事にしばられない生き方』

 マリさんの本を読むのは、『たちどまって考える』、『多様性を楽しむ生き方』に続いて3冊目です。

 以前読んでいたこれら2つの本から、なんとなくマリさんの半生を知っていたのですが、この本の半分以上を使って書かれているマリさんの半生をあらためて読むと、まるでフィクションかのような強烈な半生。
 この本を読み始めたとき、うつの波がきていて調子が悪く、暗い気分だったのですが、そんな気持ちも吹き飛ぶくらいのインパクトの強さです。

 例えば、マリさんは14歳の時に初海外(1人旅)を経験しています。そしてパリに到着したその日にもう野宿寸前の危機、という時に、「自分自身を支える、もうひとつの自分」を発見したといいます。

 不安な気持ちに飲み込まれそうな時も、自分自身の核にある本質は変わりはしないのだからと、どんなことでも乗り越えていける勇気を持つことができたのです。

 これを読んで、そうだ、私もうつになる前は確かに逞しさを持っていた、と思い出しました。
 詳細は省略しますが、私は進学・就職の度に、周囲の人から驚かれる程度の方向転換をしてきました。かなりのエネルギーを要したのは確かですが、それをやると決めて乗り越えてきたのは、まぎれもなく自分でした。このことを、マリさんのエピソードが思い出させてくれました。


 マリさんといえば『テルマエ・ロマエ』で、古代ローマにお詳しいというイメージがあります。歴史は繰り返す、古代ローマと現代社会はどこか似ているというところから、皇帝ネロを私たち現代社会人と重ね合わせ、学者プリニウスのような生き方を提案しています。

 正解のない、混沌とした時代を生き抜くためには、プリニウスのように、自分の内側にそれに対抗できるだけの豊かで揺るぎのない価値観を育てていくことが大切で、さもなくば、ネロのように、目の前に次から次へと差し出される価値観に飛びついては、常に振り回されることになるのだと、ふたりの対照的な生き方が、教えてくれるのだと思います。
 人って、自分を取り巻く人間関係しか自分を映すものがないと、どうしても煮詰まっちゃうんだと思うんですよ。それこそ周りの人間の思惑に左右されて、振り回されっぱなしの暴君ネロみたいになっちゃう。

 人間関係というと、私は今まで失敗の連続でした。
 大学生の時には、同級生と大喧嘩をしました。幸い、仲介してくれる人がいて、お互いに反省して、今では適度な距離を保つことができています。
 この適度な距離を保つということを、私はこの時初めて学びました。それからは周囲の人に「なんだか最近丸くなったね」とよく言われるほどに穏やかになりました。いつの間にか、人間関係に固執しないという強みが身についていたようです。


 この本を読んで、期せずして、自分の強みに気付くことができました。こんな本の読み方もあるんだなぁと発見でした。

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