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私が3年半経って産経新聞を訴えようと思ったわけ

2020年9月23日、産経新聞を名誉毀損で訴えました。
11月25日に東京地裁記者クラブで記者会見をし、26日に第一回期日が行われました。以下は、私が記者会見でお話した全文です。

3年半前に起きたこと

産経新聞がこの記事を書いてから、私が提訴するまでに3年半が経っています。3年半経っ て、なぜ私が名誉毀損を訴える裁判に踏み切ろうと思ったのかをお話したいと思います。

2017年3月22日にネットに記事が出たあと、4月5日には産経新聞社宛に内容証明郵便で抗議文を送り、記事の訂正と文書による回答を求めました。しかし、それに対する 回答はありませんでした。2020年9月23日、産経新聞社を提訴すると同時に、代理人の弁護士を通して記事の削除を請求しました。10月5日に産経新聞から記事の削除には 応じかねるという回答があり、3年半経って初めて私はこの件に対する産経新聞社の見解を知ることになりました。 

2017年3月12日、21日、22日と続けて産経ニュースで記事を書かれ、その影響 もありネット上ではかなりの数の私に対する誹謗中傷が飛び交っていました。当時の私は、 精神的にもかなり疲弊していましたので、産経新聞に抗議文を送るだけで精一杯でした。当 時、弁明のための記者会見を開くような余力も残っていませんでした。 

市議として県営団地に入居することが本当に問題であれば、宮古島の新聞社2紙や沖縄2紙も問題視したはずですが、新聞社や市議会、宮古島市当局から問題を指摘されたこ とはありませんでした。 

今回訴えた記事は、明らかな数字の間違いや私が言っていない発言などが記事にされて おり、誤解が広がったままでいることにとても苦しめられてきました。 記事はネットで全国に流れましたが、島の中で誤解が広がったことが私にとってはとてもつらく、実際の生活に悪影響を及ぼしました。

3月22日に団地入居についての記事が出た直後には、団地の駐車場に鉄柱のついたブ ロックが置かれるなどの実害がありました。市議になったことで住所が公開されており、ネ ット上でも拡散されたため、安心して生活することができなくなりました。

ネット上では私が不正、不法に団地に入居したとの言説が広がりました。 ネット上には以下のような誹謗中傷が今でも残っています。 

「資格がなくても不正補助を受ける議員が地方行政を担うことに問題がないと?」 
「辞職当然だな 詐欺罪で逮捕も視野」
「反日売国奴であり住む家もない」

また、今でも知人などに当時の記事を読んで記事の内容を信じていたと言われることも あります。 しかしこれまで、私自身が事実を伝えていく場はありませんでした。 

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個人とメディアの力の差を思い知る

2017年12月、産経新聞が沖縄タイムス、琉球新報について書いたデマ記事が問題になりました。沖縄県内で起きた交通事故で「米兵が日本人を救出した」という美談を、沖縄2紙が黙殺したと報じ、沖縄 2 紙は反論しました。その後、産経新聞は事実を検証し、2018年 2 月 8 日に謝罪し、記事を削除しました。新聞社という、発言力を持つメディアが抗議すれば対応するが、個人がいくら事実を主張しても見向きもされず黙殺される。私はこの件で改めて、個人の力の弱さを感じ、事実に基づかない記事を削除するためには裁判をするしかないと考えてきました。 

しかし、市議ではなくなり生活もようやく落ち着きを取り戻したなかで、裁判を起こし、それによりバッシングが再燃する可能性が大いにあることを考えると、恐怖心がわきあがりなかなか踏み切れませんでした。誹謗中傷は収まっていても、ネットの中にはいつまでも事実と異なる記事が消えずにあり、検索して出てくる度に重苦しい気持ちになりました。自分自身が行動しなければ現状を変えることはできないと思いながら、2年が過ぎました。

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エンパワメント 自分自身を取り戻す力

そんな中で、伊藤詩織さんや大坂なおみさん、MeToo の声をあげる女性たちの存在に励まされました。そして誰もがバッシングに対する恐怖心を抱きながらも、自分自身の尊厳のため、またこれからの未来のために声をあげていることにエンパワメントされ、自分自身を取り戻す力をもらいました。

エンパワメント=自分を傷付ける外的抑圧をなくし、それによって自らを抑圧する内的抑圧を減らしていくことで、本来持っている力を取り戻すこと

それだけでなく、Twitter などで匿名で書かれる誹謗中傷に対しても発信者情報開示請求をして訴える方々も増えました。その姿を見て、私に限らず政治の場に出る女性、政治に声を上げる女性たちが、日常的にどれだけ多くの誹謗中傷を受けてきただろう、またそれを当たり前のように我慢してきたのだろうと改めて思いました。

もうこれ以上、我慢し続ける必要はないし、自分の尊厳を傷付ける相手に対して、堂々とNO と言っていいのだということを、数々の声をあげる女性たちが教えてくれました。

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基地に反対する女性だから執拗に攻撃された

私がなにより問題だと思うのは、産経新聞が自社の思想にそぐわない行動をする議員や市民に対して、社会的、政治的な影響を及ぼすことを目的として、事実と異なる記事を書くという手法を繰り返し、マスメディアの持つ権力を乱用していることです。

人口5万5千人の小さな島の市議会議員を、産経新聞がここまで執拗に攻撃したのは、私が国が進める自衛隊のミサイル基地建設に反対して当選した市議であり、女性であったからだと思っています。

産経新聞社は、事実を検証し伝えるというマスメディア本来のあり方に立ち戻ってほしいと思います。また、マスメディア全体が、力の弱い個人に対する記事が誹謗中傷に繋がらないかを検証し、小さきものの声を聴く立場に立ってほしいと願っています。


IWJ 会見の全編動画


東京新聞 望月衣塑子記者

この記事の中ある動画の最後に伊藤詩織さんとお話している場面があります。記者会見が終わってホッとして、詩織さんとお話しているところです。ここで私の想いを語っているので、声が少し聞こえづらいですが、ぜひ聞いてください。

名誉毀損の裁判をやることにより再びバッシングされている人の姿を見たら、次に続く人も躊躇してしまう。そうならないように、笑顔でいられるように、女性たちが励まし合っていけたら、と思います。


弁護士ドットコムニュース

産経新聞

産経新聞は記者クラブでの会見に取材に来ませんでしたが、記事を出しました。
反省どころか、「石嶺元市議が同年に市議当選後、所得制限のある県営団地に入居していたことを報じていた。」と、県営団地の条例の中にも全く出てこない「所得制限」という言葉を使い、再び私への誤解が広がるような表現をしています。
しかも、自分の側の主張しか載せず、こちらの主張は書いていません。取材をしなかったとしても、少なくとも訴状からこちらの主張を書くことはできるはずですが、それもしません。
これがマスメディアのすることでしょうか。単なる「自己主張」だと思います。


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KAORI ISHIMINE
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