見出し画像

沖縄の尊厳 館長のウムイ2015.7.13→2020.5.24

今から5年前の7月、宮古島にたったひとつの映画館、パニパニシネマの下地館長に声をかけられて、三上智恵監督のドキュメンタリー映画「戦場ぬ止み」を観に行きました。その日は三上監督も来島してアフタートークもあるということで、三上さんに会わせたいから打ち上げにもおいでと誘っていただきました。

画像3

私はその頃、長男が3歳、次男が1歳半、とても映画を静かに観られるとも思えなくて、「観たいけど、無理そうなので打ち上げだけ行きます」と言うと、「観てから三上さんと話さなきゃダメだよ」と館長。今考えると当たり前の話だ。「子ども達は見ててあげるから、ゆっくり観て。」と言っていただき、子どもたちを連れて滑り込みセーフで映画館に駆け込んだのを覚えています(ちょっと始まっていた気がする)。

あぁ、観られて良かった・・・。観終わってロビーに行くと、館長のお連れ合いさんが、子ども達とずっと遊んでくれていました。

この日が、三上監督との初めての出会いで、次の作品が宮古島も舞台になる「標的の島 風かたか」になるとは思ってもいませんでした。

ここに載せた文章は、その翌日に書いたものです。これを読んで下地館長は、「あの文章はもっと多くの方に見てもらうようにしたいと思いました。できれば新聞へ投稿と思いました。若干、手を加えなくてはいけないと思いますが、如何ですか。無理なくお考えください。」と言ってくれました。

でも、自分の気持ちをあまりにもストレートに書いているこの文章は、新聞投稿にそぐわないと思ったし、修正するにしてもどこをどう直せばいいのか分からなかったので、私の方ではこれを書き直すのは無理そうです、と断ってしまった。

今読み直しても、拙い文章だなぁと思う。この頃の私は、沖縄に住んでいながら、辺野古の反対運動のこともあまりよく分かっていなかったし、宮古島に軍事基地ができるのは嫌だ!という気持ちだけで行動していた。だから、辺野古の運動のありようも衝撃だった。

拙いけれども、その時の初々しくて正直な気持ちが出ていると思うので、そのまま載せます。

5月20日に天国へ行った、下地館長に感謝をこめて。

この文章に書いた熱い想いを、そのまま持ち続けられているかと自分に問うと、その答えは必ずしもYESではないんだけど、それも含めて館長は見守ってくれると思う。生きるということを。想いは形を変えながらも、沖縄の尊厳を守りたいと思うよ。

画像1

映画「戦場ぬ止み」
よしもと南の島のパニパニシネマにて、24日までやってます。

私は昨日観てきました。
辺野古の現場で起こっていることをずっと観ていくと、翁長知事当選の時のあの喜びが、なぜあれほど大きかったのかを知らされます。
私も翁長さんに一票を入れて当選を喜んだ沖縄県民ですが、ここまでのことだとは感じていませんでした。

映画を通して、人間の尊厳というのが、ほんとに強く強く感じられて、ただ涙が出てきました。
観ていて涙を止めるのが大変な映画でした。
この辺野古での長い長い戦いは、沖縄の人たちの尊厳を求める長い長い戦いなんだと気付かされました。
ただ基地を作ってほしくない、のとは違う。
尊厳、なんです。
それは、自分一人の尊厳ではなくて、自分のために反対運動をして自分たちを守ってくれた親の尊厳、戦争で視力を失ったおばあの尊厳、亡くなった人たちの尊厳を守りたいという戦いだったんだと。

ここまで長く運動を続けてこられたのは、その背景には、大きく大きく沖縄戦というものがあると。
沖縄戦で失われた尊厳、沖縄戦の後に失われた尊厳を取り戻したいというウチナンチュの想いは脈々と受け継がれているんだということも知りました。
 
そして映画の後、静まりかえった館内。
監督もいらっしゃったし、拍手をしたい気持ちもありましたが、なんだかできませんでした。
舞台挨拶に立たれた三上監督も
「今までいろんなところで上映してきて、拍手が起こらなかったのは宮古島だけなんです。みなさんおもしろくなかったですか?」
と心配されてました。
だけど来ているのはおそらく宮古島の自衛隊配備に反対している人たち。
集会などでしょっちゅう会って、顔のわかる人もたくさんいました。
宮古島は市長が自衛隊受け入れを表明してしまったんです。
戦いは、これからなんです。
私は、ここまで壮絶な戦いを私たちはやっていくのか、と問われているような気持ちになりました。
他のみなさんも、そんな気持ちだったんじゃないでしょうか。
それで、静まり返ってしまった宮古島上映会です。

それともうひとつ、すごく大きな気付きを与えてくれました。
それは、私は今まで自衛隊配備反対の運動は「やりたくないけどやっている」と思っていました。
仕事もフルタイムで、小さい子供も二人いて、こんなことしていたら体力的にきついし、ほんとうはやりたくないと。
この1ヶ月ほど休みの日は集まりやら勉強会やらで埋まっています。
子供とゆっくり過ごす時間もないし、おいしいごはんを作る時間も、自分のやりたい織物をする時間もない。子供に悪いなと思ったり。
だから早く終わらせて、普通の生活に戻りたい、と。
もちろん、早く自衛隊配備計画がなくなって反対運動をしなくてもいいようになってほしいです。
でも、これは「やりたくないけどやっている」ことではないと
「一番大切なことをやっている」のだと思わされたのです。
この映画が、尊厳を守るっていうことが、人間にとってどれだけ大切か教えてくれたんです。尊厳を守っていかないと、人の心はズタズタになっていってしまいます。
この映画は、私に力を与えてくれました。

みなさん「戦場ぬ止み」観に行ってくださいね。

カオリ

画像2



いいなと思ったら応援しよう!

KAORI ISHIMINE
応援していただけると嬉しいです。 いただいたサポートは、裁判に必要な経費に使わせていただきます。 よろしくお願いいたします!