わたしのすきなもの#01 図書館
わたしのとって「図書館」というのはおうちのことを抜きにしたらいちばんに大切な場所かもしれない。
実家から図書館が歩いて5分ちょっとの場所にあったことから、小さい頃からよく親に連れられて行っていた。
親が本を選んでいるときは子供用のスペースで本を読みながら待ち、帰りは学校でもらえる緑色の大きなバッグに、大小さまざまなこども向けの本を10冊めいっぱい詰めてよろよろと帰る。
もう少し成長してひとりでも行けるようになっても、そのサイクルは変わらず、借りて帰る途中の、信号を待ちながら我慢できずに読みだして気がついたらまた赤になっていたこともしょっちゅうだった。
エレベーターの中でも読んでそのまま家に入り母の「ご飯って言ってるでしょ!!!」という声でふと我に帰るという…今考えると危ないからほんとうにやめてほしい。
あとは家の鍵をよく忘れる子供だったので、「おや……?」となると図書館に行って夕方までだらだらと過ごし、なんとなく親が帰って来そうな時間を見計らって戻ったものだった。
決して大きな図書館ではなかったけれど、緑が生い茂った敷地内にぽつりと立ってどこか暗い雰囲気の地元の図書館がわたしはだいすきだった。
しばらく経って、少しだけ離れた場所に新しく図書館ができると聞いた。そこは通っていた小学校から歩いて行ける場所だったので、確かまだオープンする前にクラスで遊びに行かせてもらってフェルトでできた紙芝居を読んでもらった。
がらんとしたそこがとても新鮮で、早く行きたい読みたい借りたい!とやたらにそわそわしていたものだった。
オープンしてからも何度も行った、その「新しい」図書館はどこもかしこも新品の匂いがして、本も心なしかつやつやで、CDまで置いてあって、随分と奥行きのあるその場所にわたしの世界がまたちょっとだけ広がったような気がした。
自転車を乗り回すくらい大きくなったあとは、区内の他の図書館を全部制覇しようと何日かかけて回ったこともあった。こんなにも図書館によって空気が変わるんだなあ、もしかしてわたしが通っていた図書館はだいぶ古いのではないのかなあ、なんて思いながら自転車旅をするのは今思い出してもかなり楽しかった。
もっともっと大きくなった今は、飛行機で違う国にだって行けるようになった。わたしはそこで世界でも指折りの美しさを誇る図書館も国を越えていくつか見に行ったりもした。
図書館はもちろん本を借りる場所であるけれど、わたしにとってはおうちみたいにくつろげるところだし、勉強部屋だったし、観光名所でもあるし、これから好きになるかもしれない作家さんたちのお見合いの場所でもあるのだ。
今でも、引っ越しをするなら図書館の近くに住みたいと思う。
そんな未来も予定もないけれど、もし、万が一わたしにこどもができたらやっぱり図書館に連れて行きたいと思うし、こどもが本を好きになろうがならまいが自由だけど、わたしはこどもの側で図書館から借りた本を読んでいたいなあと思うのだ。