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創造力は眠っているだけだ


2年前、渋谷のIT企業を経てフランス雑貨の店を始めることにした。飽き性の私が10年も勤めていたので紆余曲折はあったけれど総合的に良い会社だったと思う。

私はHTMLのHも知らぬ素人だったし、インターネットがピーゴロンゴロン、と懐かしいメロディを奏でながら接続を待つ黎明期から爆発期を経てネットショップのイロハを本当に勉強させて頂いた。

サラリーマンをしながら年に1回パリ旅行のついでに買ってきた雑貨のネットショップもはじめは趣味程度だった。そのうち、リアルでお客様の反応が見たくなり、たった一つの机でマルシェに出店したところ思いがけず好評だった。

Googleで「フランス雑貨」と検索すると上位に表示されるようになり、百貨店やショッピングセンターなどさまざまなディベロッパー様からイベント出店のお声がけを頂くようになり、気づけばサラリーマン生活との両立が難しくなってきた。

あるイベントで

「あなた、さっさと独立した方がいいわよ。

こんな面白い店ないわよ」

とお客様に言われた。

この仕事で衝撃を受けた一言だった。

同時に迷いが吹っ飛び解放され、自分の存在が認められてうれしくなり、笑顔になれた瞬間でもあった。心の奥底で眠っている創造力が呼び覚まされた瞬間でもあった。

(後で知ったことだけれど、そのお客様は日本中のだれもが知っている某大企業の社長夫人だった)

これはもうサラリーマンを辞めてもいい、というサインではないか?

サラリーマンを辞めるときはいろんな人に

「サラリーマンは続けた方がいいよ」

「そんなんで食えるわけがない」

とさんざん言われた。

(ご忠告ありがとうございます)

2019年7月14日、フランス革命記念日。ついに横浜山手にお店をオープンした。

それから東急Bunkamura「パリ祭」や地元の横浜そごう、松屋銀座に出店するまでに至った。

革命記念日にオープンさせたからといって日本をひっくり返そう!!、とか、世の中の仕組みを変える!!などそんなだいそれた大義はない。

ただ自分の働き方を変えて「フランス好きの方に喜んでもらえる今までにない店を生まれ育った横浜でオープンした」という本当に自分の中の小さな革命でしかない。

フランスで大ヒットしたヤロン・ヘルマン著「創造力は眠っているだけだ」

(プレジデント社・林昌弘氏/坪子理美氏/ふるたみゆき氏 訳)

を読んだ。

本当はプロのバスケットボールの選手を目指していたのに、けがで断念せざるを得なくなり、絶望の中で見つけたピアノ。16歳から習い、アメリカの名門ジュリアード音楽学院に合格、今やパリのジャズシーンに欠かせない世界屈指のジャズピアニストになった著者。

「そんな遅くから始めてピアニストになれるわけないじゃないか」

「自分はなにか才能にあふれているわけでもない」

「情熱を傾けられるものが何もない」

つい、私たちは固定観念にとらわれがちだけれど、自分を縛り付けているのは自分自身かもしれない。

漠然と「本当はこうなりたい」という計画があるならば「まずは完ぺきに準備しなければ!」と力むと逆にいつまでたっても一歩を踏み出せない。

今の仕事をやめろ、という話でもない。

まずは今できる小さな一歩を踏み出すと、今まで見えてこなかった可能性や学ぶべきこと、自分に足りないことが浮かび上がり、計画に向けて努力しようとする。その分野に長けた師匠を探そうとする。

(私の場合、横浜市経済局がスタートアップを応援するビジネススクール「YOXO(ヨクゾ)イノベーションスクール」との出会いも大きかった)

パターン認識といって、まずは基礎に時間をかける。自分が興味のある分野の基礎を把握し、理解し、分析する。それから構築しなおし、自分のスタイルを見つけていく。

著者が絶望の中、手探りで見つけた新たなピアノの道をいかにして構築し、探究したか、筋道に沿ってコツコツと努力してきた姿がこの本には詳しく描かれています。

もし、学生さんでまだ自分の進む道が見つからない、社会人さんで今の仕事を続けるかどうか迷っている、いつか起業をしたい、など今の生き方に疑問を持っている方にはおすすめの本。

私も継続して精進しようと思う。

まだまだ、学びなおしの時はつづく。

▼プレジデント社「創造力は眠っているだけだ」
https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002434.html

[著]ヤロン・ヘルマン氏(Yaron Herman)

1981年イスラエルのテルアビブ生まれ。

子供時代はプロのバスケットボール選手を目指し、国の代表選手として将来を嘱望されていたが、16歳の時、試合中の大怪我により選手生命を絶たれる。失意の中でピアノを習い始めたことをきっかけに、国際的に評価を受ける音楽家へと成長した。19歳で渡米、その後、飛行機の乗り継ぎで滞在したフランスのジャズシーンに魅了され、現在はパリを拠点に活動。

これまでに10作のアルバムをリリースし、2009年には「iTunes Jazz Album of the Year」を受賞。故チック・コリア氏など、ジャズ界の伝説的アーティストとの共演も多数。日本では、すみだトリフォニーホール(東京)での2009年の単独コンサートを皮切りに、ソロ、デュオ、トリオでの来日公演を重ね、国内各地のジャズ愛好家を魅了する。

モントルー・ジャズ・アカデミー(スイス)芸術監督を務めたほか、現在はエルプフィルハーモニー・ハンブルク(ドイツ)ジャズ・アカデミーの芸術監督として運営・指導にあたる。

[訳]林 昌宏(はやし・まさひろ)氏

1965年名古屋市生まれ。翻訳家。立命館大学経済学部卒業。

訳書にジャック・アタリ『2030年 ジャック・アタリの未来予測』『海の歴史』『食の歴史『命の経済』(小社刊)、『21世紀の歴史』、ダニエル・コーエン『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』、ボリス・シリュルニク『憎むのでもなく、許すのでもなく』他多数。

[訳]坪子 理美(つぼこ・さとみ)氏

1986年栃木県生まれ。博士(理学)。東京大学大学院理学系研究科修了。

一般向け科学書を中心に英日翻訳・執筆をおこなうほか、教育、生物学研究に携わる。

訳書に『悪魔の細菌─超多剤耐性菌から夫を救った科学者の戦い』(ステファニー・ストラスディー、トーマス・パターソンら著、中央公論新社)、『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』(ランディ・オルソン著、慶應義塾大学出版会)など。『命の経済』(小社刊)を林昌宏氏と共訳。

著書に『遺伝子命名物語―名前に秘められた生物学のドラマ』(坪子理美、石井健一 共著、中公新書ラクレ)がある。

[訳]ふるた みゆき氏

1987年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。

2019年より、ピティナ(一般社団法人全日本ピアノ指導者協会)の公式ウェブサイトにて、音楽小説『旅するピアニストとフェルマータの大冒険』を連載。同作のオーディオドラマと音楽劇の脚本・演出を担当している。創作活動の傍ら、編集職として出版業界に勤務。

▼横浜山手フランス雑貨のお店はこちら

https://www.ukfrenchstore.com/

最後に、この本とご縁をくださったふるたみゆきさんに感謝申し上げます。

#はたらいて笑顔になれた瞬間

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