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『その仕事、全部やめてみよう』拝読しました

良い本を読んだ次の日の朝というのは気分が最高に良くて、なんだか大型のアップデートが終わったPCを再起動させるような、そういう気分になります。

元同僚で日頃から尊敬しているDMMの松本さんがさらに尊敬する人物として挙げられているのを見て、「俺より強いヤツに会いに行く......」と意気揚々に購入したのですが、素晴らしい書籍でした。配り歩きたくなるレベルというのは頷ける。

この本には良いところが2つあって、1つは小野さんのご経験の描写の距離感、もう1つは今まさに読むべきという旬の度合いでした。

まずご経験の描写の距離感という話ですが、経験談をベースにした本というのは、自分が最前線で戦っていたときに得た学びを書いているものなのか、それとも陣頭指揮をしていて「俺が部下を操作したから勝てた」というのを、現場の苦労は数行で済ませて美談にまとめ上げたものかに収束します。

そして得てして後者が多いのだけれど、今回は清々しいほどに前者で、「なるほど、この人は自分が現場だと思っているんだな」というのが文章から伝わってくる本でした。

何より自分がソフトウェアエンジニアという職種なのもあって、職種柄・業界柄サービス開発において踏みそうな、前半の「やめるべき仕事」記述は、だいたい地雷を踏み抜いていたこともあって、自分には突き刺さりました。

ソフトウェアエンジニアは変わった性格の人間が集まっているのかもしれないですが、職人気質とビジネスとのバランスは絶対担保しなければいけないと強く訴えかけてくる文章でした。こういうのは経営とエンジニアリング両方を見てきて、少なからずジレンマだったりを抱えたことがある方でないと書けないのでしょう。

加えてこの本は「旬」で、今DXという波の中でレガシーな業務体質から急に脱皮しようとしている中、絶対に生じうる組織の歪みをどう回避していけば良いのかについて考える、良いきっかけを与えてくれそうだと感じました。

僕は既にそのレイヤーの視座に立っているかと言われると全然そんなことはないと思うので、偉そうには言えませんが、少なくとも「組織としてアジリティと堅実さを両立するにはどうしたら良いのか」、「必ず今後一緒に歩んでいくエンジニアという存在をどう扱うべきか」が非常に現実的な視点、かつどっちの心情も汲み取った形で書かれています。

僕はそこそこ読書が好きなのでぼんやりとわかることがあるのですが、指針になる本というのは、自己陶酔的に未来を語るものではなくて、自分自身が行う地道な取り組みの延長にどうやって未来を作っていくか、が丁寧に書かれた本だと思います。そういう本は読者に強い勇気を与えてくれます。おかげ様で今日も頑張ることができそうです。

あとブログも面白い。皆さん読みましょう。以上。


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