蛇の川下り
蛇の川下り 国府のむかし話
宇津江村に住む「よそ八」という男がいました。
彼はある日、魚好きの母親のために岩魚を釣りに行きますが、気づいたら山奥の大沼まで来てしまいます。
その沼には大蛇が住んでおり、祟りがあると村人たちは恐れて近づかない場所でした。
しまったと思いましたが、時すでに遅く、よそ八は大蛇に見られ高熱を発し倒れました。
その晩、美しい女性が現れ、よそ八の看病を七日七晩寝ずに行います。
彼女の作った薬は効果があり、よそ八は回復しますが、女性は次第にやつれていき、最終的には姿を消しました。
よそ八が元気になった頃、夢の中で現れた女性は大蛇であることを明かしました。
竜となるために海での修行に出るために嵐を呼び洪水を起こすことを考えていましたが、それによって人や動物を傷つけることを恐れて悩んでいた時に、よそ八を見てしまったというのです。
本当はよそ八は死ぬ運命だったのですが、彼が孝行者であるのを知っていたので、薬として自分の血を与えていたのでした。
「もう力を失い、海にいけなくなりましたから」
この話を聞いた行者が、大蛇を救うために祈りを捧げます。
祈りの結果、嵐が起こりました。その時、ある人は赤いふたつの光が川を下り海に向かっていくのを見たといいます。
そして嵐が去ると四十八の滝ができていました。
大沼は水がなくなり、行者の姿も見えなくなりました。
嵐の前には、梵音滝のあたりで行者の祈る声が聞こえると言われています。
※行者は不動明王の化身。よそ八は四十八、つまり仏法四十八願であるといわれています。