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消えゆく世界のなかで——私がバスの中で知ったこと
私は、10歳の誕生日を迎えようとしていた。
夕方のバスの中、ふと周りの人々を眺める。
秋が深まりゆく中、西日が長く伸びる午後のひととき。
そのとき、ふと気づいた。
私はいつか死ぬのだ。
そして、このバスにいるすべての人も、誰一人残らず、この世から消え去る。
そう思うと、胸が締めつけられるような気持ちになった。
お気に入りの鉛筆も、良い匂いの消しゴムも、大好きだったあの人も——すべてが同じ。
それなのに、車内は穏やかで、人々は何事もないように過ごしている。
平気なの? 怖くないの?
そう尋ねてみたくて、私は隣の老婦人に視線を向けた。
だが、彼女は知人と今朝のニュースについて語っている。
「さつまいも掘りが始まったんですって」
そんな何気ない話を、とうとうと続けていた。
「詩とメルヘン」by青葉 第三作
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1980年代によく読んでいた「詩とメルヘン」へのオマージュとして作ってみました。
当時、詩と絵をコラボするのが斬新で大好きだったあの雑誌を編集者及び絵コンテ 青葉でお送りします。
追記)絵を差し替えてみました。今度は、モネをインスパイアした色彩の絵に。「死」を考えることは、同時に「生」を浮き上がらせるような、そんな気持ちを投影してみました。