
『銀の海 金の大地』布教感想/令和の世に大復活を遂げた銀金を読んでとにかくこいつはデケェ物語のようだぜ……と震えた初読勢感想怪文書
こんにちは!!!!
銀とか金とか聞くと、ポケモンよりも先に「空の軌跡のEDみたいだな……」と思ってしまう男ことどうも俺です!!!
誰に伝わるのこの話?
というわけで、この度は『銀の海 金の大地』復刊おめでとうございます!!!
知らない方もおられるかもしれないので一応の注釈を入れると、コチラはかの高名な「少女小説」の草分け的存在・氷室冴子さんの作品でして、長らく絶版状態が続いていたものがウン十年の時を経て装いも新たに復刊を果たしたのだとか
今月から月一ペースで1巻ずつ発刊するそうです
すなわち、乗るしかねぇビッグウェーブが今巻き起こってる……ってコト!?(答えはYES)
個人的には長らく興味のあった本なのでワクワク気分で本書を買いに走り、早速読んでみたわけですが……
どうやら、とんでもねー巨大な物語を目撃してしまったようだぜ……と震えています……
修学旅行で奈良の大仏見たとき、あまりにもデカ過ぎてビックリするより前にポカンとなりませんでした?
なんかもうデカ過ぎて下からじゃ大仏なのかどうかさえよくわかんねぇ……みたいな
というか、あのデカさを「大仏」の二文字で済ますな
「デカ過ぎソーリー!!ハイパーウルトラビッグ大大大大仏」って名前にしないと帳尻あわないくらいデカいだろあれ
本書を読み終えた直後である現在の感想はそんな感じでございます
なんかよくわかんないけど、すげぇ壮大な話始まるんじゃないのコレ!?みたいな
てか一巻だけじゃこの大仏のデカさはまるでわかんねぇぞ!?みたいな
ぶっちゃけ、この一巻だけで「面白かった・面白くなかった」を語ることはできないんですが、とにもかくにも未知の扉を開けてしまった感が強い
読後感が奈良の大仏
修学旅行で悪ふざけで食った鹿煎餅の味まで克明に思い出せる
未読勢の皆様にもぜひこのクソデカ大仏を見て欲しい、この読後感を味わってほしい……と今回は筆をとった次第でございます
後半からはネタバレ感想になりますので、くれぐれもご注意ください
銀の海 銀の大地
夢のなかで、真秀は船にのっていた。これは夢だと、夢のなかでわかっている。
舞台は古代日本――湖の国・淡海。14歳の少女・真秀(まほ)は、複雑な生い立ちのため人々から疎外されながらも、病で寝たきりの母・御影(みかげ)と、目も耳も不自由だが不思議な霊力をもつ兄・真澄(ますみ)とともに気丈に生きていた。ある日、真秀は母の病にきく薬をもらうため丹波行きの船に乗るのだが。「古事記」を愛した氷室冴子が手加減なしで書いた、超弩級のエンターテインメント小説!
本書を読んで真っ先に感じるのは、読者のページを捲る手を一瞬も止めさせない圧倒的な筆致でしょう
銀金は、古事記を下敷きにしているらしい見慣れぬ世界観(時代背景?)の物語ですが、この「見慣れない」というのは俺の知り限り小説では割と足を引っ張る要素だと思います
というのも、見慣れない世界観もそこに現れるよく知らない用語も、本来は読者を躓かせ、読書の手を止めるありがちな要素だからです
が!!!!!!
氷室先生が書いちゃったらもうそんなもん関係ないんだわ!!!!
だって、そんなもん全部吹き飛しちまう圧倒的な作家の腕力があるから!!!!
物語は古事記の時代、病気の母と目も見えず耳も聞こえない兄とを一人で支えなければいけない少女・真秀の視点で語られます
ネタバレなのであまり語れませんが、自分が身をおく村という共同体に頼ることもできず、家族をたった一人で守らなければならない真秀の境遇は、あまりにも辛いし心細い
そんな辛い境遇にいても、なお気丈に誰にも弱みを見せまいと頑張っている真秀には、「好き」とか「嫌い」ではなく「応援しなければいけない」という気に自然とさせられます
ぶっちゃけ読者に主人公を応援させてしまったらもう作家の勝ちみたいなもので、その主人公が辛い目にあえば読者もつらいし、主人公にいい事があれば読者も嬉しい
共感こそは小説最大の武器なんだなと改めて思ったし、氷室先生の筆致でそれをやられてしまったらこの真秀に肩入れせずにはいられない
そして、主人公・真秀は基本的には気が強くて跳ねっ返りなんだけど、自分の境遇を悲しむこともあり、だけれども母親や兄のことをすごく愛していて……と感情のジェットコースターなもんだから、肩入れしているこちらとしても感情が忙しい
この一巻だけでいうと、完全にプロローグといった感じで、これからどんな物語になっていくのか、正直予想が全くつきません
一巻ラストについても、あまり詳しく語れませんが……
正直、無責任な予想になってしまうとは思うんですが、コレはすごい物語になっていってしまうんじゃないか?という予感がします
というか、これだけプロローグで読者の興味を惹いてしまうこの物語が「本気」を出してしまったとき読者はどうなってしまうのか?
一巻を読み終えたばかりの身としては、それが楽しみでありつつも恐ろしい
この感情は、正直読んでみなければ伝わりきらないものだと思います
というわけで、どうか未読勢の皆様に本書をオススメさせてください
このワクワクを共有してーんだ俺は!!!!
みなさん、俺と一緒に月一ペースで銀金の新刊を読み、饗乱のレイヴパーティー(感想を言い合うだけ)に洒落込みませんか!?!?
TLで未読勢の皆様の感想を見かけた際は、「リプしちゃおっかな、やめとこっかな……」って迷った挙句、そっと「いいね」させていただく手筈は整っております
復刊された「銀の海 金の大地」、ご賞味いただければ幸いでございます
ちなみに、解説でガッツリ内容のネタバレあるらしいので注意だそうです!
以下、ネタバレ注意!!!
というわけで、以下、既読勢向け感想
いやどういう話なん!?!?!
いや面白かったですけども!!!!どういう話なんコレ!?!?!!?
わからんわからんわからん!!!!面白かったことしかわからん!!!!!
銀金、いままで読んだことのないタイプの話過ぎて先の展開の予測が一切立ちません
これisなに?
古事記についての知識なんてペルソナ4で培ったものしかないし、そもそもペルソナ4は主役のペルソナがイザナギだったことくらいしか古事記要素覚えてないから何も知らないのに等しい
よって、この物語の先行きも本当にわかりません
ただ相当骨太な物語だな〜と感じざるを得ませんでした
個人的にもっとも衝撃的だったのが、作中における「性」の描かれ方についてです
というか、このお話で描かれる「性」にまつわる描写、生々しくて怖くないですか?
うまい表現が見つかりませんが、ここでいう「性」とは、直接的な意味ではなく暴力の一種としての「性」という意味になります
それは真澄や真秀が受ける性加害であったりだとか、そもそも主人公兄妹が偉い人の性加害から産まれてる疑惑であったりだとか……
てか、そもそも御影のような女性に手を出して子供まで産ませるの流石に人間のやることじゃねぇ……
真秀が美女ってわかった途端に色目使い出す真若丸をはじめとした男達もキツ〜い……
ひとえに、ここにある生理的嫌悪感は本能的な「暴力への恐怖」に根ざしているように思います
暴力という大きなカテゴリのなかに性にまつわるものがあって、基本的にそれらは見たくないもの・触れたくないものとされているとは思うんですが、この物語では意識的にそういった諸要素が散りばめられているように感じました
特に、真澄という美し過ぎる男が女性に性加害される件
目も見えず、耳も聞こえない弱者が、けれども美しいというだけで食い物にされるという描写がグロテスク
肌についた紅を真秀が見てしまう一節が生々しい
真秀を含め、彼女達家族は社会的には弱者です
にもかかわらず、彼女達はあまりにも美しい
それは危険で、不安な組み合わせです
実際、一巻だけでも真澄は一度、真秀は二度も危機に陥っています
そして、おそらくはその目下最大の被害者が御影であり、その被害から産まれたのが真澄と真秀で……
というところまで考えると気になってしょうがないのは、氷室先生はこの物語でなにを描いたのか? という点です
彼女達家族はコミュニティからも孤立していて、あまりにも弱い
それは一方的に被害者になる危険性を如実に示しています
彼女達が無事でいられるのは、美知主の温情を受けているから、という心細い前提以外になにもない……
そんな苦境を生きる真秀は、これからどう戦っていくのか?
真澄の霊力とはなんなのか?
彼らの故郷である佐保とはどんなものなのか?
他にも様々ある気になる要素に俺はもう心臓が痛いです
集英社オレンジ文庫さん、大変不躾なお願いなのは重々承知ですが、もう明日続刊を発売してみませんか?
集英社オレンジ文庫さん、俺はどこまでも本気です
早く続きが読みたいですよ俺は
ご検討、よろしくお願いいたします
まとめ
というわけで、長らく気になっていた氷室冴子先生の作品をようやく読むことができたうえに、大変続きが気になる内容でめちゃくちゃ満足でございます
一ヶ月待つのも辛いな〜とは思うんですが、逆に月一の楽しみができたと思えばそれも嬉しいことですね
個人的には、こうした楽しみを共有できる同士がいてくれたら嬉しいので、どしどしオススメしていきたい所存です
改めまして、復刊おめでとうございます!
こうした絶版になった過去の作品が復刊されるのは、とてつもなくありがたいことなのでただただ頭が下がる思いです
そのくせ明日続刊出してとか無茶言ってるあたり頭下げるの下手すぎだろ俺
せっかく復刊されたんだし、売れて重版かかってくれれば嬉しいですね〜
と、そんな感じで今回はこんなもんで!
ではでは〜!!