これでデザイナーと仲良くなれる 〜デザイナーとエンジニアで上手にアジャイルする方法(模索中) 〜前編〜
こんにちは!タイガースパイクの佐藤麻衣子(マイマイ)です。今回は今年6月にオンライン開催されたScrum Fest Osakaというイベントでの講演「これでデザイナーと仲良くなれる〜デザイナーとエンジニアで上手にアジャイルする方法(模索中)」の内容を共有します!
デザイナーとエンジニア。デジタルプロダクトのものづくりに於いて密に関わっていく両者ですが、アジャイルという、その高速回転する渦の中でがっちりと手を取り合って業務を進めていくのは簡単ではないと思います。
タイガースパイク東京の中にはエンジニアが6人。UXデザイナーが5人、UIデザイナーが3人おりますが、この少ない人数でも連携を取っていくのはなかなか難しいものがあります。でも、試行錯誤を重ねながら上手にアジャイルできるように少しずつ前に進んできています。
本日は「あくまでも(模索中)」ですが、模索中だからこそみなさんのヒントになるかもしれない、そんなデザイナーとエンジニアで上手にアジャイルする方法(模索中)を前編、後編に分けてお伝えしてまいります。
タイガースパイクのご紹介
本題に入る前に、まずタイガースパイクの紹介をさせてください。
タイガースパイクはオーストラリア発祥のITカンパニーです。BtoCのスマートフォンアプリから、BtoBのWebアプリまで様々なデジタルプロダクトのUXデザインから開発までを行なっています。会社の設立からは18年。東京オフィスは今年で8年目を迎えます。世界12拠点に展開し、グローバル全体で人数は400人程度と規模は大きくないですが、その分密度の濃い、少数精鋭部隊で世界中の人々の生活をテクノロジーの力でより良いものにすることを目指しております。グローバル共通での会社のミッションは「Improve people's life through technorogy」です!
タイガースパイクでは体験のデザイン(CX、UX)と、実際のものづくり(デジタルプロダクト開発)を両方行うこと、そして、ものづくりをして評価し、さらに改善を図るというサイクルをぐるぐると回すことを大切にしています。
登壇者のご紹介
タイガースパイクのエンジニア代表とデザイナー代表ということで、こちらの2人のメンバーが登壇いたしました。
高松真平 トリタン : Tech Lead
名前と全く関係ないあだ名「Toritan」が定着したことにより、本名を忘れられがち。様々な現場をくぐり抜けてきた経験を持ち、常に冷静沈着なソフトウェアエンジニア。アジャイル系のプロジェクトの際にはスクラムマスターも担当。静かに仕事に燃える、頼れるTech Lead。
中島亮太郎 タロ: UX Lead
常に本を読んで新しい知識を吸収し、その学びをグラフィックレコーディングという形でアウトプットし続ける知の探求者。どんなに忙しくても常に笑顔で周りを癒す仏のようなUX Lead。
<Taloのプチ情報>
行動経済学×デザインというテーマでnoteにて執筆中(ペンネーム”ジマタロ”)。現在書籍化に向けて準備中。来週2021年9月13日に出版予定です。
デザイナーと仲良くやれていますか?
ケース1:アイコン差し替えたいです
いきなりですが「こんなことはありませんか?」
このようなケースは、BtoCのサイト開発現場などでよく見られるように思います。UIデザイナーが「toCのところを作る方が楽しくて、地味な管理画面などには手をいれてくれない」なんてこと、ありませんか?
表面的には問題ないように見えますが、心の声を含めて見てみるとコミュニケーションに一抹の不安を覚えます。
ケース2:盛り上がる体験設計
こちらの例で登場するのは「UXデザイナー」です。高松もタイガースパイクに入社するまでUXデザイナーと働いたことはなく、UXデザイナーが具体的にどんなことをするのかを、タイガースパイクでの業務を通して初めて体験とともに知っている状態です。
体験設計とは、最初お客様からビジネス的な要件を聞き「どんなコンセプトでつくるのか?」「どんな機能を作っていくのか?」という大元の大元を作っているような場面を想像してください。
セッションを通してUXデザイナーが「ユーザーの機会領域はこことここにあります!」と探していきます。最終的にはMVP(Minimum Viable Product = 必要最低限の機能だけをを搭載した製品)と言えるような、A機能、B機能、C機能が羅列されていきます。それを見たクライアントは「良いですねぇ、これで社内でも検討をすすめますよ!」と言っている。
こんな状況を側から見ているエンジニアの心の声です。
「そのMVP、MVPって言っているけれど初期リリースまで1年くらいかかるよ?」
「さっきのAI機能みたいなの、便利そうだけど現在のテクノロジーだと実現不可能だとおもうんだよね...」
こんな、なかなか痺れる場面が展開されていませんか??
私は、はっきりとは言えませんが、こんな場面に遭遇することは無きにしも非ずです。
ケース3:夢が広がるデザインワールド
今度は、デザイナーから見た世界です。
エンジニアとしては「できない」とはなるべく言いたくないけれど、あまりにも非現実的な案を出されたときに「ちょっとは自分で実現方法を考えてきてくれ!」と思う。
一方で、デザイナーはこんな風に返された時点で「ダメだ。話にもならない。なんでこの良さがわからないかな?」と謎の上から目線になる。
こんな調子でコミュニケーションがうまく成り立たないということはありませんか???
こうなってしまうと、戦うモードになってしまい「一緒に作り上げよう!」という雰囲気ではなくなってしまいます。
このようなデザイナーとエンジニアの意識の乖離、ぶつかり合いは結構起こっているのではないかと思います。
今回のセッションのアブストラクトに、このような文章を寄せていました。
こちらが、まさに今回のセッションでお話ししたいことです。Tipsや心の持ちようを少しでもご紹介できればと思います。
タイガースパイクのプロダクト開発
使いたい、をカタチにする
タイガースパイクが掲げているミッションは「使いたい、をカタチにする」です。とてもシンプルなワンワードなのですが、よくよく考えると複雑な話です。
まず、ユーザーが「使いたい」と思うものを考える。これは「使わなければならない」や「これしかないので使う」ではなく心から「これは使いたいプロダクトです」と思うプロダクトを定義する。
そして、ただ「定義」して「デザイン」するだけでなく「カタチにする」。実装して、世に送り出すところまでをワンストップでやりましょう。というのがタイガースパイクのミッションとなっています。
「体験のデザイン」「リーン」「アジャイル開発」
では、具体的に「使いたい、をカタチにする」ために(=プロダクトを開発するために)必要な要素は3つあります。
まず、体験のデザインを通して「ユーザーが使いたいもの」を定義します。リーンを通して、その定義されたものを「最適な順番と内容」で計画します。最後にアジャイル開発を通して「変化に対応しながら」作ることで「使いたい、をカタチに」を実現することができます。
体験のデザインから出発し、継続的なプロダクト開発を
抽象度が高いのですが、実際にやっている業務を概念図的にするとこのようになります。
二つの大きな円があり、左側が「体験のデザイン(UXデザイン)」で、右側がプロダクトバックログを作り、アジャイル開発をしている「プロダクト開発」のパートです。
まずは左側の「体験のデザイン」の輪を一度回してから右の継続的な「プロダクト開発」に進んでいくというのがタイガースパイクのやり方です。
3つのフェーズ
上記の図は、赤線で区切ったように3つのフェーズに分かれます。
体験のデザインというのは実際どのようなことをするのか?
では、具体的に「体験のデザイン」ではどのようなことをするのか?の説明をします。
上記の図の左端にあるような「ペルソナ」や「ユーザージャーニーマップ」を作るところはどこかでご覧になったことがある方も多いのではないかと思います。これは、どのようなビジネス的な機会領域があり、プロダクトが入り込む余地があるのかについて考えたりするものです。そこから具体的な「ユーザーフロー」「コアバリュー」「サイトマップ」などがアウトプットとして得られます(こちらの詳細は後ほど説明があります)。
そして、右側が「Continuous Discovery」「Continuous Delivery」というものです。アジャイルでは「dual track agile」と言われる方が一般的かと思います。どちらもアジャイル、スプリントの形式で進めていきます。プロダクトバックログを作成し、UIデザインを進めるというスプリントが繰り返されます。計画し、デザインされたものを開発に渡す。こうして継続的に開発を進めていき、ぐるぐると2つのアジャイルのトラックが回っていきます。
継続的な開発のスケジュール
継続的な開発スケジュールとしては、あまり変わりはありませんが、実際にリリースしたプロダクトのデータを見ながら、デュアルトラックのアジャイルを回して開発をしていく。デリバリーが進んでいくというカタチになります。
こちらの場合にもUXデザインが入る場所はあります。
「ユーザーインタビュー」や「定量調査」「定性調査」を間に挿し、プロダクトの計画に厚みをもたせます。
関わるロール
ここで、どんな役割の人が関わっていくか。社内的な役職としてこんな人が関わっているという例です。体験のデザインではタロちゃんのような「UXデザイナー」が活躍します。(もちろん後続のフェーズでも関わっていきます)
その隣にある「ビジネスアナリスト」ですが、こちらは日本では一般的には「プロダクトマネージャー」と言われることが多いかと思います。
その他に「UIデザイナー」「ソフトウェアエンジニア」「QAエンジニア」などがおり、1,2,3のフェーズを通していくとすごく幅広いメンバーが関わっていきます。さらに全編を通してプロジェクトマネージャーも入ってくるので価値観やそれぞれの考えていることが異なるメンバーがコラボレーションして初めて「使いたい、をカタチに」が実現できるのがタイガースパイクのプロダクト開発のプロセスとなります。
デザイナーがエンジニアと上手にアジャイルする方法
ここからが、いよいよ具体的に「デザイナーとエンジニアが上手にアジャイルする方法」の話になっていきます。「デザイナー目線」で「エンジニアと上手にやっていく方法」と「エンジニア目線で」「デザイナーと上手にやっていく方法」をそれぞれご紹介してまいります。
デザイナーとエンジニアは目指していることが違う
まずは、デザイナー目線でのお話です。そもそも「デザイナーはどういう人間なのか」ということを知ってもらいたいと思います。
ここに挙げている図、見たことがある方もいらっしゃるのではないかと思います。21世紀のイノベーションにはこの3つが必要だ!という感じで挙げられている要素です。
この3者が組み合わされば「新しいもの」や「すごく良いもの」ができると言われているのですが、気をつけなければいけないのはこの3者の人たち、それぞれが目指しているものは全然違うというところです。
まず、デザインは「需要性=ユーザーが使いたくなるもの」を作ろう!ということに意識が働きます。
一方で、ビジネスは「事業性=売れるもの」を作ろう!というところに意識が働きます。
そして、エンジニアは「実現性=作れるもの」を作ろう!というところに意識が働きます。
この3つの輪が重なっているところでものづくりをしようという話ができれば良いのですが、重ならず、むしろこの3つの輪が離れていってしまうと、目指すことが全然バラバラになっていってしまいます。そうすると、冒頭に挙げたような「コミュニケーションが成立しない」状態になってしまいます。
これを具体的な例をもって説明してみます。建物を建てる時で考えてみると、この図のような感じでそれぞれの思い描くものが変わってしまいます。
デザイナーは、居心地の良さそうな空間を作りたい。一方でビジネス側は商業施設を付けて、その建物自体がより高い収益を挙げられるようにしたいと考える。エンジニアはちゃんと作れるということで、高層であってもしっかりと作りやすい建物にしたい。という形で全然向いている方向が違うということが言えます。
ここを合わせていくことが、エンジニアとデザイナーが仲良くしていくための方法です。
今回のブログではここまで。次回は後半をお届けします。お楽しみに!
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