当事者との対話を通して、分断と平和を考える/プログラムレポート
タイモブ南アフリカ拠点の伴です🐯
先月7月から8月にかけて、「分断をつなぐ対話のチカラ」と題して、#分断 をキーワードに、ルワンダ・エルサレム・南アフリカの方と、オンラインを通して対話をするプログラムを実施しました。
対話は全編英語のハイレベルなプログラムでしたが、ベテラン社会人の方から、最年少は13歳まで、かなり幅広い年代の方が参加してくださいました!
今回は簡単にプログラムの開催レポートを書こうと思います☺
今回フィーチャーした3つのテーマはこちら。
◆1994年に大虐殺が起こったルワンダ
当時の加害者、被害者それぞれと対話をしました。
◆現在も分断が続く都市エルサレム
エルサレムに住むイスラエル人、パレスチナ人それぞれと対話しました。
◆半世紀続いた人種差別政策アパルトヘイトを乗り越えた南アフリカ
アパルトヘイト時代に生まれた、当時"白人"と"黒人"に分類されていたそれぞれの方と対話しました。
それぞれ事前課題として資料を配布し、当日ブリーフィングをしたあとに、ゲストと対話を実施。
参加者のバックグラウンドも多様だったこともあり、私自身もファシリテーターとしてみなさんの感想や視点から、たくさんの学びがありました。
分断と和解は、世界中で起こっている
タイガーモブでは、世界を舞台に、様々な分野での挑戦機会を提供しています。日本という国の中を見ても、多様な人や価値観があるように、世界を見渡すと、自分の思考の枠には収まらないような、さまざまな文化や考え方があります。
そして、私たち人間は、その中で支配や抑圧、分断、そして和解を繰り返してきました。
今回の3つのテーマは、現地に行ったとしても、なかなかいきなり現地の方と会話するのははばかられる話題だと言えると思います。こうした場だからこそ、語り合えると思っています。
そして何より、「分断」と「和解」は、私たちの日常にもある普遍的なテーマともいえるのではないでしょうか。
パンデミックの影響もあり、インターネットを通して世界が近くなった一方、まだまだ人々の心は分断されている一面もあるように感じます。
普段はニュースや教科書でしか目にしない/耳にしないことでも、顔と名前が分かった個人と対話することで、ちょっとでも「ジブンゴト」に近づくきっかけになります。
そして対話を通して、私たち自身の日々の生活や生き方を考える機会になればと思い企画しました。
遠いところ?でも、どこかでつながっているかも
今回のワークショップでは、ルワンダ、エルサレム、そして南アフリカと中継し、ゲストとの対話を実施しました。
なかなか馴染みのない3地域かもしれませんが、これからどこかでつながることが、あるいは既につながっていることがあるかもしれません。
ルワンダは、治安が比較的安定しているので、タイガーモブのインターンの中でも人気渡航先でした。そして、コーヒー好きの人であれば、1度はルワンダ産のコーヒーを飲んだことがあるかもしれません。
大虐殺の後、許すこと、和解をすることを選んだルワンダの人々から、私たちが学べることはたくさんあるはずです。
エルサレム、そしてイスラエルとパレスチナの問題。ユダヤ人といわれる人やユダヤ教を信仰する人は、中東だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、アフリカなどにもいらっしゃいます。そして、パレスチナ人といわれる人々も、難民として、移住を通して、世界中で暮らしています。パレスチナに対して同胞意識を持っているアラブ系の人も、世界中にいます。
エルサレムで起こっていることを知ることは、世界に羽ばたく人にとって、必須の知識と言えるかもしれません。
ひょっとしたら、あなたの学校/あなたの通っていた学校のALT(Assistant Language Teacher)の英語の先生は南アフリカ出身かもしれません。オンラインで英会話をしている人も、南アフリカ人の講師と出会った人も少なくないかも。
また、アフリカ大陸で、日本企業がもっとも進出しているのが南アフリカ。商社や大手メーカーに勤めている人は、仕事の関係で関わることもあるかもしれません。
言葉を交わす、感情に触れる
ゲストとの対話のセッション、英語での対話ということもあって、はじめは少し緊張した空気が流れましたが、笑顔や温かい声かけを通して、だんだんと質問が上がっていきました。
短い対話の時間ではありましたが、時間を通して、参加者の中でどこか遠い、教科書の中の出来事が、同じ時代を生きる同じ人間の記憶として、距離がぐっと広がった瞬間を垣間見ました。
対話の後のリフレクションのセッションでは、
・自分たちはどんなアクションをするべきなのか
・どうやって日常に活かすことができるのか
・自分が当事者だったらどう行動するのか
など議論が盛り上がっていました。
インターネット回線を通してですが、対話を通して、遠く離れた場所に住む人々の人生が交差した瞬間でした。
参加者の感想―対話からのテイクアウェイ
各回の参加者からの感想の一部を紹介します。
◆ルワンダ
(虐殺の後)「許しあう」という関係が想像を超えいた。同時に、この「和解」が、今後何十年もずっと続いていくのだろうか、という疑問も生まれた。
「許す以外に道がない」という言葉が印象に残っている。答えは出ていないけど、自分だったら許せたのだろうか。
繰り返さないため、経験を伝えていくことを大切にしていた。
日本でも戦争の追悼番組を毎年やっているが、またやっているな、くらいにしか感じていなかったが、とらえ方が変わりそうだ。
◆エルサレム
知ったその先にあるものは何だろう。
発信しても、情報を受け取った人が賢くなっておわる。行動するにはどうすればいいんだろう。情報を受け取ってもなんとも思わないマジョリティにどうやって伝えればいいんだろう。
まず対面してみないとわからないな、と思った。文面や動画、ニュースだけで、その国の人々を決めてはいけない。
暴力が生まれないようにするために、するべきことをもっと考えないといけないと思った。
◆南アフリカ
アパルトヘイトのとき、日本人は「名誉白人」として白人のカテゴリーに入っていたことを知った時「やったー」と思ってしまった自分がいた。
なぜ名誉白人だったのか調べてみると、日本政府とアパルトヘイト政府の関係を知り、日本もある種アパルトヘイトに加担していたと知ってショックを受けた。また、同時にそれは他のアジア人や人種を下に見ていることになるかもしれないと思い、差別心は自分とも無関係ではないと感じた。
アパルトヘイトと一言でいっても、さまざまな問題につながっている。貧困や政治、ジェンダーまで。幅広くて難しいけれど、問題の根底にあるものはなんだろう。
自分たちの環境が恵まれていると思ったし、恵まれているからこそ、どう支援できるのか考えたい。
多様なリアリティに触れること
今回は、1テーマにつき2日(3時間×2)の短期プログラムだったので、問題の複雑さに触れ、複雑な現実を前に、もやもやとした感情が残ったかもしれません。
プログラムを運営するものとして、その「もやもや」とした感覚を大事にしてほしいと思っています。
たった数時間のプログラムでわかるほど、世の中の問題は簡単ではない。だからこそそれが問題としてとらえられていて、だからこそ、私たちは学び続けるのだと思います。
便宜的に、2つの異なる立場の方をゲストにお呼びしましたが、その中でも個人個人、それぞれ違った経験や想いを持っています。
私自身も、ファシリテーターとして3つのワークショップを運営しましたが、運営を通して新しいこともたくさん学んでいます。
学びながら、少しずつ前進していきたいと思っているのです。
タイガーモブが考える次世代リーダーのコンピテンシーの一つに「エンパシー」があります。
あまり耳馴染みのない言葉かもしれませんが、「他人の靴を履いてみること」と比ゆ的に表現されることもあります。
共感するだけでなく、相手の立場に立ってみる。
言葉で言うと簡単ですが、実際にやってみようとすると、なかなか難しい。
自分たちが当然もっているもの、簡単にできることで、あらゆる原因で困難であったりなかなかできない人がいます。
自分が知らないからといって、問題が存在しないことにはなりません。
一つの地域にも、様々な立場の人が、様々な経験をしています。
タイガーモブのサイトでも、国ごとに検索ができるように、一つの国や地域の一面を見たり、情報の一端を見ただけで、知った気になってしまうのはもったいないように感じます。
一つの社会の中にも、人の数だけ存在する、リアリティに耳を傾けてみることが大切だと信じています。
今回のプログラムは、そんな複雑なリアリティに触れる機会になったのかな、と思っています。
最後の感謝を
最後に、このプログラムは、参加者の皆さんの積極的な質問や議論はもちろん、各回に協力してくださったゲストの皆さん、
そして、ルワンダプログラムの案内人のジャーナリスト・小島寛明さん、エルサレムプログラムの案内人の渡辺真帆さんのご協力があって実現しました。
これからも、みなさんの世界が広がる、挑戦機会をつくっていくので、宜しくお願いします!