【呻吟】ユイの激動
「付き合ったんだ」ユイの顔には、ニヤニヤが張り付いていた。
「さあ」とぼけてみる。
なおもユイの顔は変わらない。おそらく、私のすべてを知っているのだろう。
「彼氏が欲しかった?」
「彼氏はそりゃあ、欲しかったわ。年並みにね。でも、いらないという気持ちだってもちろんあった。共依存はイヤだし。今だって、そうよ」
「今も?どっちでもいいと思うことで、割り切ったんじゃなかったのかしら」
なんで、そんなことを言うの。ひどい。
その先を聞きたくない。本能がそう叫んでいた。
「そういう、善く言えば思考している。悪く言えば不貞腐れているメンドクサイトコ、私は好きよ」
プチッ。そんな音が脳内で鳴り響いた。
実際には、私がユイにつかみかかった衝撃で、カノジョの洋服のボタンが引きちぎれた音だった。
「怒るわよ」さすがにね。
「もう怒ってる、いえ、怒りつつも怒り切れないという感情ね。なぜこんなことをしているか、わかっていないような力加減だし」
およそ、私のすべてを知っているだろうユイを前にして、私はこう言わざるを得なかった。
「あんたに私の何がわかるっていうのよ」
「ダウナー」ユイの口が動く。
「あなたは自分の根本的な問題を、解決できないの。その二重人格ともいえるほど強烈な、二つの自我。自己矛盾。それに苦しみもがいているようで、自分にしか感じられないその境遇に溺れている。自分の哀れさも含めて、自信を愛しすぎているあなたのこと、少し羨ましく思う」
カノジョに言わせれば、私の脳内は究極のナルシシズムが展開されているらしい。
「あなたはなんにも変わっていない。ーーの最後と比べてマシかどうかとなると、私には決められないけど」
ユイはよく喋る。
それはそうとして、ーーの最期って、なんの話だっけ。そう聞く代わりに、私はこう告げることにした。
「アンタはもう失せなさい、ユイ」
風は吹いていないため、砂の崩れる音はしなかった。ここが夢だと確信すると同時に、始めて風が吹き去った。
夏休みの課題で書いたもので、400字詰め原稿用紙五十枚以内の短編小説だったので、展開が急すぎるところ多々あります。
呻吟をこれからもよろしくお願いします!