【映画を通して観る「東京」】第2回「東京で暮らす人々の姿とは?」
世界有数の大都市・東京。
この街では、これまで数えきれないほどの映画が撮られてきました。
『晩春』(1949年)、『東京物語』(1953年)といった昭和の名作から、『ちょっと思い出しただけ』(2022年)、『ケイコ 目を澄ませて』(2022年)、『PERFECT DAYS』(2023年)のような現代の映画まで、東京を舞台にした傑作映画には枚挙にいとまがありません。
では、なぜ東京という街は、これほどの長い間、映画の舞台として描かれ続けているのでしょうか?
おそらく東京には、どんな時代でも人を惹きつけるような、普遍的な魅力が眠っているのかもしれません。
そこで本連載では、東京を舞台にした映画の紹介を通して、その魅力について迫っていきたいと思います。
連載企画【映画を通して観る「東京」】の第2弾です。
前回は、東京は常に変化し続ける街であり、その実態の掴めないところが魅力だと分かりました。今回は、そんな東京で暮らす人々の姿について探りたいと思います。
東京国際映画祭について
今回も、東京を舞台に開催される映画の祭典「東京国際映画祭」について紹介します。
東京国際映画祭とは、毎年10月末~11月上旬頃に行われる映画の祭典であり、期間中に東京の日比谷・有楽町・銀座・丸の内エリアで200本以上の映画が上映されます。
日本最速公開の注目作や、ここでしか観られないような貴重な映画の上映もあり、さらには、監督や俳優の舞台挨拶も連日行われるなど、どなたでも楽しめるようなイベントが目白押しです!
ちなみに今年の米アカデミー賞にノミネートされるという快挙を果たした日本映画『PERFECT DAYS』と『ゴジラ-1.0』は、それぞれ昨年の東京国際映画祭のオープニングとクロージングの作品であり、東京国際映画祭は映画の話題の発信地として機能を果たしていることもうかがえます。
第2回「東京で暮らす人々の姿とは?」
東京での暮らし。
それは、地方の人から見れば、憧れの生活のひとつでもあります。
かくいう私も、東京での生活に憧れて、東北から関東へとやってきました。(東京ではありませんが…)
しかし、実際に東京で暮らすというのは、一筋縄ではいかないことも多く、東京ならではの苦労があるのではないかと考えられます。
そこで、【映画を通して観る「東京」】の第2弾となる今回は、「東京で暮らす人々の姿とは?」をテーマに、東京で暮らす人々の姿を描いた映画を通して、東京での人々の暮らしについて、探っていきたいと思います。
①『東京物語』(1953年)
まず紹介するのは、世界映画史に残る傑作『東京物語』(1953年)です。
巨匠・小津安二郎監督の代表作であり、英国映画協会が選ぶ「史上最高の映画100選」でも4位にランクインするなど、今なお多大な影響を与えている作品です。昨年の東京国際映画祭では、小津安二郎生誕120周年特集上映のひとつとして、4Kデジタル修復版の上映が行われました。
あらすじは、尾道で暮らす老夫婦の周吉(笠智衆)と、とめ(東山千栄子)は、東京に住む子どもたちに会いに行くが、実の娘と長男には冷たくあしらわれ、戦死した次男の嫁である紀子(原節子)だけが、温かく迎え入れてくれる…というお話です。
この映画からは、当時の東京での、老夫婦の娘、長男、義理の娘の三者三様の暮らしぶりがうかがえます。
実の娘と長男には、すでに自分たちの仕事と家庭があり、両親をかまっている余裕がないほどに、せわしない生活を送っているようです。
この生活のせわしなさは、今の時代にもみられるものであり、東京という街の急速な変化とそれに振り回される人々の生活が感じられます。
一方で、義理の娘である紀子は、一人暮らしではあるものの、働きながら自立した生活を送っていて、今の東京ではあまり見られなくなった、隣の住民との交流も描かれています。
そんな紀子が、尾道から来た老夫婦の世話をするという、温かみのある役柄を担うことから、東京での暮らしの豊かさは、生活水準や家族の有無ではなく、自立した生活にあるのではないかと考えられます。
色あせない名作ですので、ぜひご覧いただければと思います。
②『あのこは貴族』(2021年)
次に紹介するのは『あのこは貴族』(2021年)です。
東京に、確かに存在する階層社会の中で生きる二人の女性を描いた作品で、主演の門脇麦さんと水原希子さんの存在感が光る、素晴らしい映画です。
あらすじとしては、東京の裕福な家庭で育った箱入り娘の華子(門脇麦)は、結婚が自分の幸せだと信じて、ハンサムで家柄も良い弁護士の幸一郎(高良健吾)との結婚を決める。一方、地方から上京し、東京で働く美紀(水原希子)は、今の生活にしがみついてはいるが、やりがいを見出せずにいた。同じ都会でも、住む世界が違う二人だが、とあることから人生が交錯し、それぞれの新しい世界が拓かれていく…というお話です。
この映画では、東京で裕福に育った女性と、地方から上京して東京で働く女性の暮らしぶりが対比的に描かれており、同じ東京に住んでいるのに、どこか身分の違いや、格差のようなものを感じ取ってしまいます。
ただ、どちらが幸せかということではなく、どのような階層に住む人であっても、それぞれの悩みがあり、自分なりの幸せの形を模索しているという点では変わりありません。
この映画には、裕福かどうかや、結婚しているかどうかではなく、幸せの形を追い求めて、自ら生活を切り開くことが、暮らしの豊かさにつながるのだというメッセージが込められているように思います。
そういった点では、『東京物語』と同様に、自立が描かれている作品であるといえます。
広い東京の中で、二人の女性の人生が交わり、それぞれが、自分自身での生活を切り開いていく姿から勇気をもらえます。現代の東京の価値観が詰まった、魅力的な作品なので、ぜひご覧ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この2作品を通して、昔から現代までの、東京での人々の暮らしが垣間見えたような気がします。
変化し続ける街・東京では、多くの人が、それぞれの階層で、せわしない生活を送っています。しかし、今も昔も、東京での豊かな暮らしとは、自らの人生を切り開き、自立した生活を送ることにあるのだとわかりました。
東京に限らず、生活の中で、自分なりの幸せを見つけることは難しいことではあると思います。しかし、映画で描かれる人々の暮らしから、生活の希望のようなものが得られるのではないかと信じています。
このほかにも、東京で暮らす人々の姿を描いた映画は数多く存在します。
ぜひ、皆さんにとっての希望になるような映画が見つかることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
企画・編集/13期わくと
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