
利きリップ師に出会い、予算の3倍以上の化粧品を買った話
わたしの顔面はだいたいDIORでできています。
あの世界観がすごく好き。
大人でも可愛くいたいという欲望に両腕広げて「いいよいいよおいで!」って肯定してくれる感じとか、可愛いだけじゃなくて年齢相応のエレガンスもほしいという願望に「そうだよね分かるー」と共感してくれるたたずまいとか。
リップの見本がウェーブを描いてずらっと並んでいる店頭のさまは、もはや芸術の域に達している。
そういうものに惚れ込んで、DIOR様に頼っています。
コントロールカラーが出たら、全部DIORで塗装できるんだけど。
先日、ファンデーションがなくなりそうだったので久しぶりにカウンターに行きました。
わたしには特に「この人!」という美容部員さんはいないので、案内してくれた人から買うことになります。
その日案内してくれたのは、結構長いことカウンターで見かける、デパコス界隈では珍しいギャルメイクの美容部員さん。
印象的なので、何か覚えていたんだよね。
接客してもらうのは初めて。
「今日はお決まりですか?」
ファンデーションを買いに来たんだけど、待ち時間に目が合ってしまった限定のアイシャドウパレットとチークが気になりすぎる。
腐婆婆の中の乙女心がくすぐられすぎて笑い転げていたので、その旨をギャル部員さんに告げました。
席に案内され、流れるようにタッチアップ開始。
この時間は、人生の中でもかなり上位の方に来る「好き」の時間。
メイクはもともと大好きだけれどそれをプロに施してもらえるなんて、贅沢以外のどんな言葉で表現したら良いのか。
「パープル系のメイク、買ったことなくて。でも、一目惚れしちゃいました」
「そうなんですか? 意外です。絶対お似合いになると思います」
ギャル部員さんに限らず、美容部員さんの「お似合いですよ」はどこまで信用していいのか未だに分かりませんが、ブルベイエベ的な問題ならカラー下地と仕込みチークでどうとでもなるので、あまり気にしていません。
「どうせ似合わないし……」とか「こんな色つけられない」とかそんなことを気にする繊細な心は持ち合わせていない。
気になるものはとりあえず試して、しっくりこなかったらしゃーない切り替えて行け、の精神で38年間生きてきました。
アイシャドウパレットの中から、せっかくなのでパープルをメインで使ってもらい、人生初のパープルメイク。
仕上げにライラックのチークをほわん、とのせます。
鏡の中には、今までのコーラル全乗せでステータスを「健康的」に全振りしていたわたしとはうってかわり、透明感マシマシの新生めぐみティコ。
パープルの色出しもしつこくなく、淡く出るので派手な感じも全くありません。
「ちんぽ」とか絶対言わなそうな淑女がそこにいました。
「えー、すご……。全然違う……」
「すごくお似合いです。今まで使ってこなかったのが不思議なくらいです」
ギャル部員さんはわたしの前に今使ったアイテムを並べ、販促タイムに入ります。
どうしよう。可愛いけど、今日はファンデーションだけ買いに来たんだよね。
パープルメイク、毎日メイクにはしにくくない?
週末の、淑女になるときだけのポイントメイクがデパコスって、コスパ的にどうなの?
でもこのチークはDIORにしかない色だし、このチーク使うならアイシャドウも揃えたい。
そんなわたしの葛藤を知ってか知らずか、ギャル部員さんはさらにたたみかけてきます。
「今お使いのリップも、DIORですか?」
そう、この時のリップはその日家から塗ってきたもののまま。
目元とチークのみタッチアップしてもらっていたのでした。
マットな赤いリップ。わたしの定番です。
「そうです」
このとき、わたしの中にギャル部員さんへのある疑念が生じはじめます。
この人、もしかして……。
「リキッドの……」
「ですよね?! うちのっぽいなぁと思って。ちょっと待ってくださいね、当てます! ……558番かな」
タブレットでわたしの顧客情報から購入履歴を探るギャル部員さん。
表情が先ほどよりもワクワクに満ちています。
「あ、やっぱり! 558ですね」
この人、もしかしなくても自社製品オタクだった。
何だかそんな気はしていた。
タッチアップ前にわたしがつけていたアイシャドウにも、「すごく綺麗なんですけど、うちのですか?」って聞いていたし。
えー……すご……持ち主であるわたしですら、リップの色番なんて覚えていないのに。
利きリップ師の資格とか持ってるのかな。
ギャル部員さんは、今回のアイシャドウと558番のリップの相性がとても良いこと、ツヤを足した方がより透明感がアップすることを教えてくれました。
どこからかDIOR定番のマキシマイザーというグロスを取り出し、わたしの唇にのせます。
「こうやってツヤ感足してあげるといっそう夏らしいお顔になりますよ」
うん、もう買うわ。
わたし、この人からファンデーションと、アイシャドウと、チーク買う。
マキシマイザーは同じの持っているから、それ使わせていただきます。
来月はボーナスもあるからへいきへいき。
自社製品をこよなく愛するオタク、同じオタクとして仲間認定したわ。
わたしは予算を遥かにオーバーした金額をカード一括で支払い、ギャル部員さんに見送られて白いショッパーを手に歩き出しました。
ボーナスの支給日は来月30日。
間抜けなわたしがカードの引き落としが毎月27日であることに気がつくのは、このときよりもう少し先の話……。
たまには女子女子した記事が出したいときだってある。
怪人には怪人なりの美への憧憬がある。
憧れの怪人図鑑に載りました!
ヨッシャマンさんありがとうございます😂
生きていると良いことありますね🩷🩷🩷
参加しています。57日め。
