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バナナの話
我が強い。
わたしのバナナ評はこの一言に尽きます。
先日、歯の治療を受けました。
歯が割れてしまってね、麻酔必須のやつ。
注射の麻酔を打たれる前に、歯茎に塗られる麻酔あるじゃないですか。
あれがね。
なんかね。
バナナ味だったんだよね。
その治療をする過程でね、小さめの虫歯が見つかって、昨日はそっちの治療をしてきたのです。
歯茎に塗られる麻酔がね。
やっぱりね。
バナナ味だったんだよね。
「うわー、バナナだ……」って思いながら、歯科医院の診察台の上で仰向けにさせられぽかんと口を開けてるわけです。
ちっちゃい紙エプロンをして、衛生士さんなり歯医者さんなりの指示を待っているわけです。
なんだか自分が餌を待つ雛鳥になった気分です。
ところで、なんでこんなにバナナを推してくるのでしょうか。
バナナって割とクセがある味だと思うので、万人受けするとは思えないのですが……
それならりんご味とかいちご味の方がみんなに優しくないですか?
原料臭や味をごまかすのに、バナナしか勝たなかったのかもしれませんけど、バナナ以外の麻酔がほしかった。
みなさん、バナナは好きですか……?
ここまで読んでくださった方はお察しかと思うのですが、わたしはバナナが得意分野ではありません。
パフェやプリンアラモードにくっついてきたら摂取はしますけど、自分で買って食べるということはないです。
でも子どものころ、お祭りの屋台でチョコバナナを買って食べるのは好きでした。
カラフルなチョコスプレーがプラスチックっぽくて、お祭りのチープな感じとよく合っていて、特別感があって……シンプルに美味しかった。
上手に食べられなくて、串に刺さったバナナが途中で持ち手の方に滑り落ちてくるまでがワンセットの思い出。
溶けたチョコレートとバナナで手がデロデロに汚れてね。
あのころはバナナは別に嫌いじゃなかった。
いつからでしょうか、バナナを疎ましく思うようになったのは。
はっきりとした記憶はありませんが、成人してからな気がします。
バナナが入ると全部バナナ味になる、ということに気がついたからかもしれません。
スムージーも、フルーツ牛乳も、何もかもがバナナに染まります。
バナナが通った後は、りんごもいちごも顔を出さない不毛地帯となるのです。
何故、そんなに主張してくるのか。
何故、他の食材との調和をはかろうとしないのか。
何故、他の風味を駆逐してまで己の味や香りを届けようとしてくるのか。
その我の強さに、辟易したのかもしれません。
社会人として慣れない組織の中で働き、人に迷惑をかけないように、かといって出過ぎて打たれないように、と息を潜めていたわたしは、バナナの奔放さや確固たる己をもっているところが羨ましく、嫉妬していたのかもしれません。
ごめんね、バナナ。
あなたは何も悪くなかったよ。
ただ、バナナとして生きているだけだったのに、わたしが一方的に遠ざけていた。
あなたは離乳食の時からわたしのエネルギー代謝や塩分排出を助けてくれていたのに。
本当にごめんね。
スーパーにいき、真っ先に向かうのはいつも青果コーナー。
今日は、なんだか果物が食べたい気分なので果物売り場もチェックします。
あ、台湾バナナが並んでる。珍しい。
わたしは手を伸ばし、バナナコーナーの隣に並んでいたゼスプリ・ゴールドキウイをカゴに入れました。
やっぱりね、バナナは我が強い。
売り場にはたくさんの果物が並んでいるのに、バナナのにおいしかしてこない。
ほんとうにねぇ……
そういうとこやぞ。
参加しています。39日め。
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