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「生き物と人類の未来に向けて」①

エンドオブライフについての論考」では、「人生の意味とは、人類が永続的に繁栄を続けられるように努めること」としました。この考えをさらに推し進めると次のようになるはずです。

■アントロポセンの時代
数十億年前に発生した地球上の生命体は、旺盛な繁殖力で生存競争を繰り広げ、進化を続け、ホモ・サピエンスは現在の生物界の頂点にいる。
地球は全体で1つの巨大な生命体を構成しているともいえる(ガイア仮説)。しかし現在の人類はあまりにその存在が大きくなりすぎ、地球環境に多大な影響を与えた結果、アントロポセン(人新生)に突入している。

地質時代区分

46億年前に誕生した地球の歴史は、図のように「先カンブリア時代」や「古世代」「新世代」のように、地質時代区分で分けられています。ところが近年、人類は地球の地層や生物にまで多大な影響を与えてしまっています。このためノーベル化学賞を受賞したオランダのクルッツェン教授は、現代は既に新しい人類の世代Anthropocene(アントロポセン・人新生)に突入していると提案し、大きな議論となっています。地球にとって人類の存在があまりに大きくなってしまい、人類の経済活動によって地球の温暖化は加速し、氷河が消失し、海面上昇が始まっています。

2019年の国連の「気候行動サミット」で、16歳のスウェーデン人環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさんが演説し、気候変動問題について行動を起こしていないと各国首脳を非難したことは理解できます。大人は経済ビジネスによって利益を得、今の自分の暮らしを守ろうとしていますが、このままでは活動家グレタの主張のように、「あなた方は、私の夢や私の子供時代を、空っぽな言葉で奪っている」のですから。人類は自然環境と生物多様性に壊滅的な打撃を与えており、約100万種の動植物が絶滅危機にさらされていると、世界132カ国の政府が参加する、国連の「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(IPBES)が警告しています。報告書では、「この地球しか住む場所のない人類がいかに地球を荒廃させてきたか」を、かつてないほど強力に糾弾しています。アントロポセン(人新生)は、愚かな人類の存在は、地球にとって「病」なのでしょうか。
「人が生きる意味」について追及した結果が、人類の存在意義への疑問になってしまうのでは、やるせない気持ちになってしまいます。それでは次に「人類の存在意義への疑問」について、考察を進めましょう。

人類は、営々とウェルビーイング「幸福・快適さ」を追求してきました。しかしそのことが、地球に取り返しのつかないようなダメージを与えたのではないか、というSDGsの問題意識にたどり着いています。そこで視点を大幅にズームアウトし、地球と生命の歴史にまで踏み込み、「地球にとってのウェルビーイング」とは、「人類を継ぐもの」とは、にまで考察してみます。

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■ガイア仮説とは
イギリスのジェームズ・ラブロックが1960年代に提唱した「ガイア仮説」は、地球自体を自己調節システムを備えた「巨大な生命体」と捉え、生物と環境の相互作用がそのシステムに組み込まれたものであるとする仮説です。近年、エコロジーの興隆とともにこのガイア仮説が再び注目され、その理論が他の科学者らによって、補強されています。それは、地球環境を不安定にする生命は長く栄えることができず、そのことが地球にさらなる「変化」をもたらし、環境が安定するまでそのサイクルが続いていくというものです。環境が安定すれば、さらなる生命の進化の準備が整ったこととなり、生命と地球の新たな相互作用がスタートします。つまり地球システムには「恒常性」を保つためのメカニズムを備えているという仮説です。


例えば35億年前、地球に酸素は存在していませんでしたが、藍藻(シアノバクテリア)が光合成を始めると、大気中の酸素濃度は急激に上昇し、約23億年前に大酸化イベントを引き起こします。この期間に酸素を嫌う嫌気性生命体が大量に絶滅する一方で、酸素を活用する複雑な好気性生命体が繁殖可能な環境ができたのです。つまり地球は、そのシステムを安定させるために「リブート」をしたというのです。
このガイア仮説に従うと、近年の急激な気候変動は、人類が温室効果ガスを大量に排出し続けることによって起動させてしまった、地球の自己調整機能かもしれません。今回の地球システムのリブートによって、人類は滅亡に向かっているのかもしれないのです。

「生き物と人類の未来に向けて」②

「生き物と人類の未来に向けて」③


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