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【連載小説】星の下で vol.9 「黒パン」

二年生にもなると、さすがに落ち着きを見せる子も多くなった。

クラス替えがなかったので、私はまたレンと同じクラスだった。

レンは更に活動的になっており、秘密基地作りに余念がなかった。

私も秘密基地の仲間にいれてもらえた。


秘密基地は学校の裏山にあった。コンクリートとブロックの建物で、割りと大きめの、子供なら10人が座れるほどのスペースもあった。

私たちはおもちゃをここに持ち込んで、自由気ままに遊び回った。



二年生になってから、少しずつ掃除もするようになり、女子からの非難の的はレンになった。

レンは相変わらず遊んでいて掃除をサボっていた。


「お前、女子の言いなりになるのかよ?」

と掃除中にレンが話しかけてきた。

「そんなつもりはないけど……」

「じゃあ、掃除なんて女子にやらせて俺たちと遊ぼうぜ!」

「いや……それはできないよ。」

「何でだよ?」

「先生に怒られるし……」

「お前、先生なんかが怖いのかよ。弱虫だな。」

そう言われるとレンに従うしかなかった。

男子はみんなレンに傾倒していた。それだけ魅力的な男の子だったのだ、レンは。


私はいつもレンのようになりたいと心の中で思っていた。レンにつく男子はほとんどがそう思っていただろう。


そんな中で、スカートめくりが大流行した。

運動神経のいいレンは、数々の戦歴を残した。

私はというと、トロくてどんくさく、いつもめくる前に女子に気づかれた。

「お前さぁ、めくれないの?」

秘密基地でレンが言った。

「うん……」

私がそう答えると、レンはけたけたと笑い、言った。

「めくろう、めくろう、と思うからばれちまうんだよ。通りがかったときに、フワッと、こう、やるんだよ。」

ジェスチャー付きで熱弁してくるレン。私はその教えを固く守り、ようやくスカートをめくることに成功した。

私とレンは、調子に乗って上級生のスカートもめくっていった。ほとんどが白のパンツばかり。

スカートめくりは、めくる瞬間を楽しむもので下着なんてどうでもよかったけど、ある日、上級生のスカートをめくると黒のパンツをはいていた。

そのことが物議をかもした。

なんと言っても上級生、六年生のパンツだ。母さんたちが履いているような、そんなパンツ。

「めくった相手の名前はわかったのか?」

「はい、谷京香さんです。」

私たちの間で黒パンと呼ばれるようになってしまった谷先輩に、私は少しだけ、憧れ始めた。

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ちびひめ
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