心の傷を癒す時間～松山ケンイチ主演『川っぺりムッコリッタ』（ネタバレなし）

松山ケンイチさんの作品を追いかけていて見つけたこの作品、。
『川っぺりムッコリッタ』は、見終えたあとに爽やかな風が流れるような、そんな心地よい余韻を残す映画でした。

まず、「ムッコリッタ」という言葉に注目したいと思います。
これは仏教での時間の単位を表す言葉であり、本作においても特別な意味を持っています。
映画全体の時間の流れは、普段の私たちの生活とは少し異なり、どこかゆったりとした、急がない時間が流れているように感じました。
そんな独特の時間を、主人公たちはどのように過ごしていくのでしょうか。

心に傷を負った者たちが、どのようにして心を通わせていくのか。
この映画はまさに『静の余韻』を楽しむものだと言えるでしょう。
心に傷を負った者たちは、静かな自分という殻の中で閉じこもり、世間とは距離を置きながら、自分の時間を見つめます。

時間を見つめる天才の役を務めるのはムロツヨシさんです。
主人公は傷つき、流れ着いてここに来たのですが、ムロツヨシさん演じる島田という男が、静かにその心の傷を癒していきます。
島田は一見すると変人のようで、普通にしていればあまり関わりたくない人物かもしれません。
しかし、彼の目には優しさが宿っています。

小さなアパートを舞台に静かに繰り広げられる人間ドラマ。
行間を読むように、小説の文字と文字の間に描かれていない空気感、そうしたものがこの映画にはあります。
人にはそれぞれの人生があり、その数だけのドラマが存在します。
そのドラマの隙間を覗くようにして進んでいくストーリー。
主人公の抱えるものとは一体何だったのか。

この映画は人生について改めて考えさせられるものでした。
松山ケンイチさんの演技は、まさに七変化ですごいと思わされる作品でした。