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【連載小説】星の下で vol.23 「身長」

カズトからは夜遅くなってから折り返しが来た。


私はレンを連れて家に帰っていた……というか憑いてきた、のほうが正確か。

『もしもし?』

「カズト?久しぶり。」

『おぅ、久しぶり。なんかあったの?』

「いや、ちょっとみんなに話したいことがあって……」

『みんなって?』

「熊本ファイヤーズのみんな。」

『…………』

カズトは黙ってしまった。

そりゃそうだ。

レンがいなくなったあの日、熊本ファイヤーズは実質上失われた。というか、触れてはならぬ話になっていた。

「みんなに聞いてもらいたいことがあるんだ!日曜、時間とれないかな?」

『……今週は模試があるから、来週なら。』

「じゃあ、来週。昼の一時に。秘密基地で。」

『……わかった』

カズトの電話はそこで終わった。ノボルとユタカに日程の連絡をする。


にしし、とレンは笑った。

「連絡ついたみたいだな!!」

「うんうん……来週の日曜に待ち合わせ。」

「それじゃ、それまでここに住ませてもらうばい!」

幽霊に寝る時間があるのかはわからなかったが、住むとしたらここか病院くらいしかないので、仕方なくオーケーした。


翌日からレンは私と一緒に学校へ行くことに。

電車に乗ると、なぜかみんなレンを避けるように乗ってくる。レンが見えてるのかと思うが、そうではないらしい。

レンはいつものキャップを目深に被り、私からレンの表情を確認することはできなかった。


私は自分とレンの身長差に改めて時を感じていた。

最後にレンに会ったとき、レンはファイヤーズ1背が高かった。

それが、今では見下ろすまでになっている。

月日が経つのは早いものだ。

現実でのレンは、私ほどの高さはないかもしれないが、背は伸びていた。


私は駅で電車を降りると、自転車で学校へむかった。後ろの荷台にはレンが乗っていたが、全くわからないくらい軽かった。

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ちびひめ
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