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【連載小説】星の下で vol.3 「図画工作」

図画工作というのも幼稚園(ここ)でならった。

粘土なるものを丸めたりしていろいろ作った。私が作った第一号は『お母さん』だった。

絵の描き方も習った。絵は意外と得意だった。というか、好きだった。クレヨンなるものを使って好きなものを好きなように描いていく。空はどこまでも青く、人々は優しそうに微笑む。そんな絵を描いていた。

するとその絵を見た先生が

「この子は天才だ!」

と褒めちぎり、母親に絵を習うことを強く薦めた。

そんな先生の言葉にも動じず、母親は私に聞いてきた。

「翔ちゃん、お絵かき習いたい?」

「ううん、習いたくない」

「そう。じゃあ翔ちゃんの言う通りにしましょう」

母親はいつも私の考えを推してくれた。そんな母親を優しそうに見つめる父親は私の誇りだった。


前世での父親はパイロットだったという。戦争が始まったとき、父親は真っ先に召集されたという。弟を身籠っていることを知らなかった母親は、ただただ無事を祈っているしかなかったという。

父親はいくつかの華々しい戦歴を残し、そのまま帰らぬ人となった。



絵を褒められてから、私は少し慎重になった。素のままの私では、年を重ねすぎて、幼稚園児とは言えないほど何もかもが上手すぎるのだ。歌や踊りといったものは平均的だったが、前世の記憶が鮮烈すぎて、絵や文字を書いたり数字を並べるといった行為はたやすくできてしまった。それ故に天才児扱いをされ、人と違った目で見られることになった。

そこで私は、隣の子の真似をして書いたりするようになった。これで天才児扱いはなくなった。

とりあえずホッとした。

それでも絵を描くことは楽しかった。

買ってもらったスケッチブックいっぱいに、私は、自由に絵を描いた。

家の中では自由だった。途中兄貴が茶々を入れたりされながら、いろんなものを描いた。

兄貴は私の絵に感心していた。

「翔、うまいな。今度兄ちゃん描いて。」

いつもそうやって私を見守ってくれた。



前世では、弟は荒れていて、いつも金の無心にくる人としか考えられなかったから、兄弟というのはこんなに温かいものだとは思っていなかった。だから余計に兄貴を好きになった。



私は、兄貴の真似ばかりするようになった。

それで二人一緒に怒られたりした。

毎日が楽しかった。

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ちびひめ
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