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色温度を固定する選択。
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川の流れも心なしか穏やかに感じる。
(広島市)
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少し潮気混じりの風が心地よい。
(柳井市)
突然ですが、みなさんは寒い日とか暑い日とかに、部屋でエアコンを付けますか?
大体の方は付けるに決まっているでしょう。私だって付けることが多いです。
ではなぜ付けるのか?
これも当然、そのままの空気だと暑すぎる、あるいは寒すぎるからに決まっています。
われわれはエアコンを使って、自分の許容する範囲よりも暑すぎたり寒すぎたりする空気を補正して、快適さを得るわけです。
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木の葉も気温もみるみる落ちてゆく。
(安芸太田町)
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赤くなった耳に建具の音が沁み入る。
(津山市)
では次に、皆さんの夏の思い出、または冬の思い出を頭に浮かべて見てください。
人によってはですが、その思い出や記憶の中は、「暑かったけど」とか「寒かったけど」みたいな、恣意的な何かによって補正されていない(快適かと言われたらそうでもない)そのままの空気で満ち溢れているのではないでしょうか。
私はそのパターンの人間です。
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何気ない街の風景もどこか特別に見えてくる。
(大阪市)
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穏やかな牧草地にディーゼル音が鳴り響く。
(幌延町)
さて、写真の「色温度」のお話しをします。
気温と同じように光にも温度感があることは、写真をやっている方にとっては当たり前の知識かと思います。
そしてそれは適切な値に編集・調整すべきということも、不文律のように染み付いていることでしょう。
エアコンで空気を快適な温度に調整するように、光も色温度を調整することで見やすい写真になるわけです。
更に言うならば、気温や湿気、草木や人の装い(一言で表すとすれば空気感)も突き詰めれば太陽の光の具合次第でしょうから、光の温度を変えるということはこういった空気感を補正することでもありましょう。
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数百キロの道のりも、夜が明ける頃には終わる。
(沼田町)
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からりと乾いた風と光がきょう一日を洗い流す。
(高知市)
……商品として人様に売る写真ならまだしも、自分の思い出や記憶に、このような補正・快適化というのは必要なのでしょうか。
私はこの疑問に対して「ノー」という仮説を立てて、何気ない日常写真を撮り始めました。
色温度設定は5300ケルビンに固定し、色合いは補正しない。RAW記録も止めて、雑念は残さない。
当然ですが、暖かい光はこれでもかというくらい真っ赤に写ります。蛍光灯は黄緑ですし、夜明け前の街は真っ青になります。
撮ってすぐに見たときは不自然に感じることもあります。エアコンの効いていない部屋に放り出された感覚です。
ですがこれが何ヶ月何年と経って見返すと、存外悪くないのです。「あの時寒かったね」「あの時暑かったね」、なんて思い出話をするのと同じ具合です。
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ナトリウムランプの下、跳ねる魚の音。
(別府市)
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瀬戸内はうららかな空気が似合う。
(広島市)
世間的に見れば色の偏った変な写真になるかもしれません。
ですが、そんな色の偏り、ありのままの光の色が、後になって自分だけの思い出や記憶のトリガーになるのではないかと、私は信じています。
あえて色温度を固定するという選択、
いかがでしょうか。
━━2025.1.17 @自宅