いろとりどりの真歌論(まかろん) #20 武田信玄
為せば成る為さねば成らぬ成る業を成らぬと捨つる人の儚さ
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「為せば成る為さねば成らぬ何事も〜」という有名な言葉がある。この歌の本歌は武田信玄による以下のものだという。「何事も〜」というのに馴染がある身からすると、馴染みすぎて説教厨じみた鬱陶しささえ感じる何事も〜よりも、人に伝えるつもりも押し付けるつもりもなくふっと本音が溢れたようなこちらの歌のほうが好ましい。
が、ひとついただけないのは「人の儚さ」という結句だ。「せっかく頑張ってきたのに、もう少しでその成果を受け取れることに気づけずごほうびを受け取る権利を投げ出してしまう」まあ、人間ってそういうもんだよね、を「人の儚さ」というふわっとしたワードでそのまま表現しているのが気に食わない。まあ、武田信玄は武将であって、和歌のプロフェッショナルではないのでしかたがないわけだけれど。……この歌自体が短歌を作ることの難しさを語るというメタ短歌だったりするのだろうか。
短歌はたかが三十一字ではあるが、三十一の全体に徹底して意識を配るのは大変だ。より良い最後の七音を見つける前に、成らぬと捨ててしまったり、捨てたことに気づきすらしないなんて経験を私もたくさんしているのだろう。できたと思った瞬間も、成すことを捨てる瞬間だったりするし。
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