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大人が本気で読書感想文を書いてみる1【ヴェニスの商人】

『紳士同盟』という映画がある。グレゴリー・ペック演じるジャーナリストがユダヤ人差別の実態を調べるため、自身を「ユダヤ人」と名乗って生活していくのだが、容赦ない差別を前にやがて家族にまで危険が及び始める。今から50~60年前の映画だが、ユダヤ人に対する差別を克明に描いた名作である。

「ヴェニスの商人」が書かれたのは今から400年前であるが、読み終わって思ったのはユダヤ人に対する偏見マシマシで描かれた作品だなと思うと同時に、個人的にはシャイロックを決して悪人だと思えなかったことである。以下、感想に入っていく。

本日の課題本『ヴェニスの商人』シェイクスピア作・飯島小平訳

作中、シャイロックは高利貸しで私腹を肥やした強欲なユダヤ人の金貸しとして紹介されている。他方、お金持ちのアントニオは困っている人たちに無償でお金を与えるなど優しい人物として描かれている。
金に卑しいユダヤ人vs‟ひとにやさしく”キリスタンという構図で特にシャイロックにヘイトが向かう構成になっており、後半の裁判でもやり込められ、最終的にはキリスト教への改宗を強要されるなどかなり屈辱的な末路を辿っている。

だが冷静に考えて、金借りたら利子付けて返すというのは当たり前のことである。日本人は「ナニワ金融道」「ミナミの帝王」などの作品で「借りた金は返す」というのは骨身に染み込んでいると思うので、シャイロックはむしろ自分の仕事を全うしているだけに思える。何なら自分を顧みずホイホイ無償でお金を恵んでいくアントニオの方がおかしいまである。現代だったらアントニオの方が何か裏があるのではないかと勘繰ってしまいそう。
債務者を監禁して地下労働させるなんてこともせず、ただ単に取り立てをしているだけのシャイロックを犬扱いまでして貶すというのは、やはり彼がユダヤ人であるが故の偏見だと思う。

思ったよりアントニオやバサーニオに肩入れできずむしろシャイロックに同情してしまったわけだが、12月から始まる舞台『ヴェニスの商人』ではシェイクスピア劇初挑戦となる草彅剛がシャイロックを演じることとなっている。戦争シリーズなどダークヒーローにも定評のある草彅がどんなシャイロックを魅せてくれるのか今からとても楽しみである。


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