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「…でも…違ったんだ…」ドラマ『スメルズライクグリーンスピリット』感想

※ネタバレあります。

『スメルズライクグリーンスピリット』(2024)

2人の「ズズチャ〜ズズチャ〜ズズチャラ〜ララ〜♪風の向こうへ〜♪」
が聞けたたけでこのドラマ見てきて良かった…って思うよ。

『三ツ矢先生の計画的な餌付け』(2024)が終わってから見た予告で、映像の質感がBLでは見たことない好みの感じですごく楽しみにしてた、
『スメルズライクグリーンスピリット』(2024)
タイトルも感覚派でパッション感じる、絶対好き!Hello〜hello〜。
けど、もし主人公の少年がトランス女性だとしたら、「口紅を塗る少年」っていう謳い文句はステレオタイプ過ぎる…っていう一抹の不安もありつつ、でも他の部分の文章やHP全体の作りを見て、大丈夫だろうと思いつつ。

ドラマの1話を見てすぐ、原作が読みたくなって読みました。
原作と出会わせてくれたことに、感謝してる。
原作は10年以上前の作品だった。10代の頃、けっこうディグってLGBTQ+関連の漫画を読み漁っていた自負があったのに、なぜこの作品とは出会っていなかったんだろう…。
原作者の永井三郎先生は、人間のえぐみを抉り取るのが上手ですね。
『深潭回廊』も全巻購入&読んで超確信!

『スメルズライクグリーンスピリット』は、「性」に真正面から向き合ってて「こういうの、言って欲しかった」ってなったの。
私が原作でもドラマでも繰り返し見ているシーン:

永井三郎『スメルズライクグリーンスピリット』SIDE-B

夢野母「だって「男だから」「女だから」抜きに誰かに恋するなんて結構すごい事じゃぁない?」
夢野「…でも…違ったんだ…」
(中略)
夢野母「今タローちゃんの「三島くんを好き」な想いは宙ぶらりんなのね
その想いはどこへ行っちゃうんだろうね…」

(見ないと良さが伝わらないので、ぜひ原作とドラマで見てください!)
「男も女も関係ない」言説では不十分な部分が、私の内側にあるから。
そして、最終的に夢野と三島が結ばれているところが、本当に希望なの。

あと、少年たちの悩みを聞いて導くのはやっぱり母親なんだね。まぁ、どうしてもね。女性万歳🙌笑

傷だらけになるけどキラキラしている名作でした。

*「今、ドラマ化する意義」について考えたことをトレースしてみる。

原作者さんのコメント:

正直不安でした。10年以上前の作品ですので、だいぶ常識や見方も変化しているので今更感はないかなと。でも、思春期の敏感さとか悩む姿はいつの時代でも誰でも思い当たるものだと思うので、そういう点に共感して頂けたら幸いです。映像化に携わって頂けた方々に感謝しております。

https://www.mbs.jp/slgs/original.shtml

原作を先に読んじゃった影響もあるかもしれないけど、ドラマに没入した感想というよりその周辺に思いが巡り。

「同性愛嫌悪の描写はもうこれ以上見たくない」っていうのが私の本音で、
つまり、今回のドラマで提示されてるイシューが平成初期に後退しているように感じてて、でも三島のアイデンティティのあり方や「宙ぶらりん」を描いているのには救われたし。。と複雑な気持ちになりました。

私は小さい頃、たぶん2000年代の前半くらいに、中村中さんの半生を映像で再現した歌番組みたいなものをテレビで見て、初めてトランスジェンダーの方々の存在を知った。当時は「性同一性障害」と呼ばれていた。
その時も「口紅を塗る少年」とは違っただろうけど、なんらかの「煽り」文句があった気がする。
中村さんは番組の最後に「友達の詩」を歌っていて、小さい頃の私はその歌声と歌詞に感動した。今でもよく覚えてる。
このドラマの劇伴は、中村中さんが担当されている。

今、大学での学びや、素晴らしい書籍や発信者のおかげで、トランスジェンダーイシューについては全くと言っていいくらい、捉え方が変わった。
「異性愛規範」から議論を先に進めるためのBLやLGBTQ+コンテンツがグローバル規模で制作されている今、
このドラマの感想をXで読むと、平成初期の価値観から進歩してないっていうか、観客も未だ「手探り」なことをやっぱり突きつけられたんだよね。

でも、毎週必ず見てたし、楽しみにしてた。そうなれたのも、今だからできる丁寧な質感で作られたドラマだったからかもしれない…。監督曰く、インティマシーコーディネーターもちゃんと入れてるとのことなので。

ただ、今私が"一番"出会ってアガるのは、規範や価値観を撹乱して更新してくる作品かな。


大人の俳優の演技が見てられないくらい苦手😅だったんだけど、
主人公3人+先生の、Z世代の若い役者さんたちの演技が本当〜に素晴らしくて。
M世代の私「ありがとう🙏♡」の気持ち。

夢野太郎くん役の藤本洸大さんの言葉:

やっぱり人間って型にはめたいというか、型から抜け出している少数の人のことを“普通じゃない”と言う傾向があると感じています。でも、全部まとめて普通というか、もともと型なんて存在しないということを僕としてもこの作品で再認識できたので、皆さんにとっても考える機会になったらうれしいです。きれい事に聞こえるかもしれないけど、そういう意識を持つことが大切だなと思います。

https://thetv.jp/news/detail/1221399/p2/

今の日本の教育で、包括的性教育が正しく行われていないことは明白。
SDGsの「ジェンダー」の項目は男性中心主義社会での女性差別の問題(ジェンダー格差)を扱っていること、「ジェンダー」と「セクシュアリティ」の違い、セクシュアルマイノリティの人権問題など、正しく理解されていない現状がある。
だけど、藤本さんみたいに自分の頭で考えて、自分なりに知ってる言葉で、こういう風に堂々と発信できるって、素晴らし勇気だし、見習いたい。
日本の教育が個々人に「手探り」を強いるのではなく、正しく知識を教える日が一刻も早く訪れることを願っているし、そのためのアクションをしていきたい。


ミュージシャンのショーン・メンデス(Shawn Mendes)さんが最近発信した言葉を借りると…

ショーン曰く「私が本当に若かった頃から、私のセクシャリティについてみんなが色々なことを言ってきた。セクシャリティはとても美しくて複雑なもので、自分の思うままに扱おうとするのは難しい」。
ショーンは続けて自分のセクシャリティに関する噂についてどう思っているかも匂わせた。「私にとってとても個人的なもの、自分自身の中で探っていたもの、まだ発見していなかった、そして今も発見していないものに対する侵害のように感じていた」とコメント。

https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a62752785/shawn-mendes-says-he-is-figuring-out-sexuality-241030/

「セクシャリティはとても美しくて複雑なもので、自分の思うままに扱おうとするのは難しい」
セクシュアリティはこういうものだと私も思う。

ただ、前進したい。


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