『ひとひらのパヒューム』
『ひとひらのパヒューム』 No.050
不慮の事故で死を遂げた妻を復活させる
男はその一心で生き延びてきた
今夜は月・金星・土星・冥王星が一直線に並ぶ神秘の時
やがて怪しげな光に包まれ、愛しい幻影が結界の中に浮かび上がった
男は懐かしさと愛しさに揺れ動く
妻もまた二人で過ごせることを強く望んだ…
男は冥界への入り口がある洞窟に足を踏み入れた
ランタンを灯しながら妻のいる場所を目指す
ここでは決して声を出してはならないと妻が伝えてくれた
しかし、男は妻との誓いを守れなかった…
妻の元に辿り着いたが、ここから出るための準備があるから“ふりむかないで”と言う
暫く続いたカサカサと動く不気味な音に反応し、妻の方に向き直ってしまった
そこには変わり果てた惨めな妻の姿が…
あまりの醜さに、男は驚嘆の声を上げた
走りながら来た道を急いで戻った
突然何体ものグールが前と後ろからやってくる
両手に持った銃で異形の頭部を狙い撃つ
着弾するとポップコーンのように弾け飛んだ
どんどん湧き出てくるグールを排除しながら外の明かりを目指す
洞窟から飛び出したと同時に手榴弾を投げ、出口を塞いだ
一呼吸置き、辺りを見回すと何か違和感がある
風景は全く同じだが、あらゆる色が失われていた
男はただ茫然と立ちすくむ
そこは灰色に包まれたモノクロの異界
焼け焦げた世界に漂うひとひらのパヒューム
美しい香りを放つ妻の幻影が妖しく語り掛ける
だから、“ふりむかないで”と言ったのに…
最愛の女性は、最も醜いクリーチャーへと変化し始めた…
皆さまからのお心遣い、ありがたく頂戴します。 そんなあなたは、今日もひときわ素敵です☆