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『君は黄昏ど真ん中』

『君は黄昏ど真ん中』 No.043

これがラストチャンスか…
君との初めての戦い
僕の方が明らかに劣勢で、ここからの逆転は不可能だ
でも、このままでは終われない
君がこれほどまでに得意だとは思わなかった
数学と物理の法則を使えば簡単よ、と君は笑う
勝負をしている相手からアドバイスを受けるとは…
しかし、僕は何度やっても上手く行かない
洗濯機で洗ったセーターの様に筋肉が縮こまってしまう
君に見られていると思うと、身体の動き全てがぎこちなくなる
それを意地でも克服しなければ…
もし、ここで一発決めれば何とか面子は保たれる
背中に感じる君の視線がじりじりと焼け付く
大きく息を吸い、指先に力を込める
標的を見据えながら歩調を合わせ、君の方程式に従って弾丸を発射した
最後の一撃は目標に到達するまでもなく、力強くいつもの溝を滑っていった…

黄昏に伸びる二人の影
互いの健闘をたたえ合う
僕を冷静に励ます知的さに苦笑い
君の理にかなったフォームに見惚れた
敗者から勝者へのささやかな祝杯
タピオカを頬張る君の満悦顔
僕が得たものは君との時間
初めて二人で歩いた夕暮れ時を思い出す
最初に出逢った時、僕は既にストライクを取っている
君というピンに向かい、心が一直線に転がっていった
いや、やっぱり“君に取られていた”の方が正解だろうか…


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