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『ひとしずく』

『ひとしずく』 No.017

あなたはどこに行ってしまったの
涙で濡らした枕を抱きしめながら思いを巡らす
全部あなたが悪いんだからね
過去の感傷に引き寄せられる
こうしないとあなたを繋ぎとめる手段がなかったの
今夜も少しだけ自分を誇ってみる
私はあなたと幸せになりたかった
ただそれだけなの
思い出のレストランで最後の晩餐
私はサングリア、あなたはミートスパゲッティ
互いに同じものを食べ、同じものを飲む
あなたが席を離れた時に私が落とした一滴の雫
私が好きなサングリアの味はどう?
口の横にソースを付けたあなたの無神経なところが愛おしく、憎らしい
こんな事になるなら出逢わなければよかった
こんなに通じ合えないなら近づかなければよかった
芳醇な香りに甘く潜んだ危険な誘惑
私はそんな女なの
豊満な身体に深く刻んだ魔性の束縛
私はそんな女…

夜明け前に輝く月明かりが鉄格子の影を暗い部屋に映し出す
女は今夜も光と影のなか、自分の香りに酔いしれている…


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