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『Smile Again』

『Smile Again』 No.013

どれほど思いを寄せたところで何かが始まる訳ではない
あの日見つけた笑顔をもっと近くで見つめていたい
彼と楽しそうに会話する君を眺めるのは嬉しくもあり、悔しさもある
僕が唯一彼女に近づけるときはミルクティーを運べるときだけだ
この時が幾度となく繰り返されるたびに気持ちの絡まりが複雑になっていく
生み出される感情のすれ違いにはウンザリする
そんな自分を誇れる人っているのだろうか
そんな自分を肯定できる人なんているのだろうか
遠く離れた台風がもたらす風により飛ばされた僕の帽子を拾ってくれた天使
無機質な空間に突如はじけ飛ぶ打ち上げ花火のように儚い
彼女の世界にきっと僕は存在していないだろう
今僕の世界から見える席に座る彼女は一人で寂しそうに外の景色を眺めている
そして時々いつも彼と二人で座る角のテーブルにも
彼女がフリーになったんじゃないか、と単純に思ってしまった自分に愛想が尽きた
その一方で自分でも理解できないほど内側から何か湧き上がるエネルギーを感じる
僕はカウンターの裏に回り、メモ用紙に躊躇なく連絡先を書いていた
ポケットにしまい込んだ2秒後に自分の行動が無意識に起こったことに気が付いた
意味が分からず理解できない行動に出た自分を何故か否定したくなかった
自分の中で新たな時空の渦が流れ出す
ふと我に返ると現実の時間の経過に戸惑った
店を見渡すと居るはずの席にはもう誰も居ない
僕はこの時に初めて心が締め付けられ、砕け散る音を聞いた
彼女の残した空間に触れるのが敗れた者に対しての慰め
そう自分に言い聞かせ、テーブルを片付ける
そこであるものを見つけた時に砕け散った心の破片が徐々に修復し始めた
今までより強靭になったハートを携えた僕はポケットから取り出したメモを青いスマートフォンの上に乗せ、彼女の後を追った
最後にもう一度、あの笑顔を見るために…


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