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『最初で最後の贈り物』

『最初で最後の贈り物』 No.024

俺は娘に最初で最後の贈り物をするため、悪魔に魂を売った
なぜそんな契約をしなければならなかったのか…

娘が生まれて3年後、俺の嘘が引き金となり妻と離婚することになる
そして娘に会うことは許されず、生涯心の中で思い続けるしかなかった
十数年が経ったある日、別れた妻から娘に起こった事件を聞き、俺は言葉を失った
“4人の男達から、暴行を受けたの…”
泣きながら話す声にやるせない思いと、悔しさが湧き上がってくる
俺は自らの殺意に耐えきれず家を飛び出し、降りしきる雨の中を彷徨っていた
どこかの軒先でうなだれていると、身なりの整った白髪の男もここにやってきた
“何か問題でも抱えているのですか?”
なぜか胸の内を見透かされている様に感じた俺は全てを話した
そしてその男は自分のことを悪魔だと名乗り、俺は疑いもせず契約を結んだ
それはなぜか…
土砂降りにも関わらず、白髪の男は髪の先からつま先まで一切濡れていなかったからだ…

母娘は外食を終え、家まで歩いて帰っていた
母親はスマホをさっきの店に忘れたことを思い出し、急いで取りに戻った
あんな事があってから娘を絶対に一人にしなかったが、今回は俺がそうさせた
少し不安げに歩き出す娘に向かい、俺もゆっくりと歩を進めだした
不意に娘は立ち止まり、何となくスマホを開くとニュースが流れる
“車が崖から転落、4人組大学生ミュージシャン、全員死亡”
娘はとっさに口に手を当て、涙で画面が滲みだす
そんな娘とのすれ違いざまに残した言葉

“こんな贈り物しかできない俺を許してくれ…”

振り向きざまに見た光景は、激しい炎と共にその男性が光速で燃え尽きる瞬間だった
その男性の灰を散らす風は娘の身体を包み込むように通り抜ける
なぜか懐かしい心地よさを一瞬だけ感じた
娘は微笑み、理解し、そして泣き崩れた…


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