グクのソロ曲『3D』の話【歌詞と不適切表現】
「I AM STILL」を観ながら『3D』を考えた
映画「I AM STILL」に何回か通っております。
グクの活動やインタビューを追いながらソロ曲も楽しめて、一粒で何度も美味しい映画ですね!
この映画を観てたら、『3D』に関する論争の記憶がふと蘇りました。
バンタン情報を求めて検索してると、色んな戦いの形跡が地層みたいに出てくるので、その話は知識としては知ってましたが、あまり触ったことがありませんでした。脳内の「後で見る」フォルダに入れてたから。
他の記事でも書いてるんですが、自分の中には「このへんは危ないから今は見ないようにしよう」ラインがあって、「兵役」同様、これも引っ掛かってました。バンタン界隈、地雷多いw
ただ最近、閉めてたドアが、もうわりと開いちゃってるんですよね。
ジン君が『Awake』でカギ外したのをジミンちゃんとナムさんが「MMM」で蹴破り、ユンギ事件で大開放しちゃったとこへ、崩壊しかけてるドアの向こうからグクが『3D』歌いながら踊り出てきた感じです。←イマココ
まあいっか(半ば諦め)。気になった時が深掘りタイミングです。
というわけで、映画観てる間、脳の裏側で『3D』について延々と考えていた話を聞いてください、アミヨロブン。
歌詞かMV見ながら読んでいただけると、良いかもです。
曲の構成
『3D』の内容を自分が要約すると、「遊び人ハーロウが一途なグクに影響を受けて、ちょっと変化した話」になります。
面白いのは、この二人の対比構造が明確な点だと思います。
対比の構造
歌詞
グクパート:クリーンで表現に問題がない
ハーロウパート:スラングが多く猥雑
恋愛観
グクパート:一貫して親密さ(肉欲含む)を求める
ハーロウパート:軽薄な関係性が多かった遊び人
ストーリー
グクパート:愛を歌い、直接触れ合いたいと一途に突き進む
ハーロウパート:多数の経験を振り返りつつ、現在は一人に絞った様子が窺える
グク>ハーロウ:影響を与え、最後には「実際に会って触れ合いたい」と同じ願望を持たせている
ハーロウ>グク:影響を与えない
一見掛け合い曲にも見えるのですが、実際は曲的にも歌詞的にもグクパートが主体の構造で、分離できるようになっている、という点が面白いですね。
『3D feat. Jack Harlow』からハーロウパートを取り除くと、グクのパートだけで完結した『3D Alternate Ver.』になるのですが、分離しても成立するくらい世界が分かれています。
「Alternate Ver.」は初回リリースに含まれていますので、最初からそういう意図で作られた曲だと思われます。
『3D Alternate Ver.』だけ聞くと、これはK-POPアイドル・JUNG KOOKとしての延長線上にある恋愛曲と取れます。
しかし『3D feat. Jack Harlow』版では、異なる世界観を並べることで物語に奥行きが生まれます。違う価値観や経験を持つ二人の対比から一途さの勝利を描いているように取れるため、面白い効果だと思っています。
『3D』にVer.違いが多い理由
ちなみに、『3D』はVer.違いがとても多いです。
以前曲データ取ってる時に気づいて、チャート対策かなと思ってました。
複数のVer.をリリースすることで、再生回数や購入数が合算され、チャートでより高い順位を獲得しやすくする、という戦略があるからです。
ちなみに、他にVer.違いが多いのは『Seven』『Butter』『Dynamite』です。そのためこれらの曲は、自分にとっては「明確にBillboardを狙った曲」扱いでした。リリース計画をするのは事務所なので、事務所側の判断だと思っています。
(何故か『Permission to Dance』はそんなにVer.がありません。賞レースは他に任せて楽しもう!スタンスの曲なのかもしれませんね)
今回改めて見直すと、「Alternate Ver.」が初回リリースに含まれていたことは、ラップ自体を好まない市場への対応と取る以外にも、ノーカット版を受け入れがたいと感じる従来ファンへの配慮とも取れるように思います。
ラップパートを分離できる『3D』の対比構造は、曲として見ても面白いですし、ファンに選択肢を提供しつつ商業的な成功も狙う、一石二鳥のマーケティング戦略という視点から見ても、興味深いのではないでしょうか。
歌詞表現
『3D』は大きな反響を呼びましたが、中にはネガティブなものもありました。理由は、ハーロウパートの歌詞にある表現だと思われます。
「英語曲(またはHIPHOP、ラップ)にはよくあるやつでしょ」「半分言葉遊びなんだから逐一取り上げる必要なくない?」というご意見もあるかと思いますが、ちょっと置いといて、とりあえず見てみましょう。
『3D Clean Ver.』で消されているのは以下の太字部分ですが、自分が検索した範囲では、何故か消されていない(要するにリリース前の不適切ワードチェックで引っ掛からなかったと思われる)「ABGs」についての言及が多かったです。
日本ではさほど馴染みがない言葉だと思いますが、皆「A(アジアン)」に引っかかったってことでしょうか。
これらの不適切ワードに対しては、気にしない人もいれば、そうでない人もおり、一部では謝罪と公式声明を求める署名運動やハッシュタグデモなどが行われたようです。
ただこの運動、『3D』自体のセールスや各国語版Wikiの記載内容、発言しているアカウントの言語や出身国を見ていると、韓国・日本での限定的なムーブだったのだろうかという印象も受けます。
当時を知らないので何とも言えませんが。
とりあえず、物議を醸した歌詞ではあったようです。
では、関係者はこれをどう捉えたのでしょうか。次は、各登場人物に焦点を当てて考えてみたいと思います。
グクはどう考えているのか
映画「I AM STILL」やライブ配信、インタビューを含む発言を見た限りでは、このコラボはグクの希望で実現しており、本人は喜んでいるようです。
ハーロウはラップラインも好きな歌手として名前を挙げてたことがあるようですし、元々好きだったんでしょうね。
グクはソロ活動をする上で、「BTSのJUNG KOOK」とは違う新しい自分を作りたかったんじゃないかと受け取っていますが、そこにはK-POPアイドルとしては出さない直接的な表現や、男性性の誇示も含まれたんだろうな、という印象を受けています。
元々グクは、若いうちからHIPHOPに触れていますし、早い段階からタトゥーを入れたいと願っているなど、ストリートカルチャーに親和性のある価値観を持っています。
活動期のライブ配信でも、ARMYからの「どうしてDirty Ver.を作ったの?」という質問に、「どうしてDirty Ver.だと思うの? ノーカット版なのに。率直になっただけ」と回答しており、これが出したものに対する彼の捉え方だと思われます。
上記配信に触れているインタビュー記事はこちら。
BTSを見ていると、私たちが思う以上に、彼らは私たちをよく見ていますし、何が望まれているのかを真剣に考えているという印象を受けます。
グクの言葉からは、ARMYの望みも理解しつつ、自分を縛るものを打ち砕き成長や変化を望む意欲と、それができるのは自分だけだという信念を感じます。
メンバーはどう考えているのか
バンタンは大抵発表前に互いの曲を聴いていますので、まずいと思ったらメンバー内で意見するチャンスはあったと思います。今回は誰が聴いたんでしょう。
『3D』は、ナムさんやSUGAに先行視聴してもらったそうです。BTS楽曲の屋台骨である二人を選んだ辺りに、グクの期待と不安が窺えます。
これについては、超かわいいインタビュー記事がありました。
バンタンの場合、ラップラインによる教育の成果もあって、HIPHOPを源流としているのは全員共通しており、音楽的な感性が似ているなと思います。
ラップラインが「ジョングガ、やるなw」って言ってても不思議じゃないな、というのが自分の感想です(妄想)
ちなみに、テテが「『3D』がカッコよすぎて悪い言葉が出そうになった。さすが、我らが黄金マンネ」「最近『Seven』より『3D』が好き」と言ってたライブ配信はこれ(12:10~)。
テテが『3D』かけて一緒に歌ってたライブ配信はこれ(9:05~)。気に入ってるようで何より💜
事務所はどう考えているのか
署名を含むARMYからの反応に対して、事務所が公式回答したという結果は出てきませんでした。
昔BTSの歌詞に女性蔑視の要素があると指摘された時は、事務所として対応していましたが、今回はそうではないということは、それが回答なのだと思います。
ちなみに、事務所側が問題を見過ごした可能性は低いと思われます。
歌詞における不適切な表現は、「表現の自由」とポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)との間でしばしば話題になり、実際にリリース後修正された案件もあります。
『3D』には不適切な言葉を削除した「Clean Ver.」もありますので、歌詞は事前に精査されていることがわかります。
また、もし何かあった場合、デジタルCDは差し替えられても、グローバル規模でフィジカルアルバムを回収するには大変なコストがかかりますし、それを負担するのは事務所です。
リスク回避のため、リリース前に世界市場を視野に入れたリーガル面・マーケティング面のチェックを行うのは必須だと思われます。
今回、事務所が反応しないことでスタンスを明確にしている件からは、
「これは検討して選択的に出した結果であり、後から指摘されて対応するような想定漏れはなかった」
と読み取れるため、私は肯定的に受け取っています。
(ジン君のハグイベントの時の「応募条件漏れ」みたいなのは良くないw)
ファンはどう考えているのか
この件に関して、署名などの抗議行動を通じ、グクに見直しの機会を与えようとしたファンもいたようです。ここではファンダム内でも反応が分かれており、興味深いなと思いました。
一番大きな齟齬は、擁護派と差別非容認派との対立じゃないかと思われますが、署名を含む要求に対して、正義の名を借りてグクの行動を支配しようとする気配を感じて拒否している人や、不適切な表現に触れてショックを受ける人など、色んな意見がありました。
ARMYの記事も読んだのですが、結論まで至っているものが少なく、当時の感情的混乱や「差別」と言われてしまったが故の語りづらさが窺えました。
自分の印象としては、グクパートの歌詞に問題となる要素はなくても、「差別語と取れる表現がある曲にグクが参加した、彼がそれを許容した」という点が、ARMY的に最も引っかかった部分なのではないかと捉えています。
ちなみに、いつもながらアンチも便乗してきたようで、音楽番組への出演禁止要求や19禁指定要求など、署名以外にも色々あったみたいです。
署名運動に関しても、組織的かつ匿名前提の動きにファン発祥の運動かどうかを疑う意見もあり、K-POP界ってほんとFAN WAR激しいなと驚きました。
ちなみにこの署名、最終的に何人集まって誰がどこへ提出したのかが見つかりません。X海のどこかに漂ってるのかな……。
感想
今回色々読んでみて、後発新規の私は、長年成長を見守って来たARMYとは違う視点で見ているんじゃないかと思いました。
最初からグクやジミンちゃんにはタトゥーが入ってましたし、SUGAはお砂糖モードだったし、出発点が違うんですよね。
だから、かわいいグクが世界に出た途端バッチイのがついた!っていうショックを共有していない、ということを先にお断りしておきます。こればかりはしゃーないのです( ;∀;)
差別と創作
私は自分も書くのが好きですし、仕事で「不適切な表現」と長く付き合ってきたため、創作における表現についてはよく考えました。
個人的には、創作物における表現の自由は尊重する派です。
考え方は時代や社会でも変わります。本当に問題のある表現については、ダメな言葉を消せばいいというものではないというのが信条です。
綺麗な言葉でものすごいことを言い出す人もいますので、差別を語る時には、文脈や発言者の意図を把握することが、最も重要だと思っています。
社会人として、ポリティカルコレクトネスにおいて不適切と判断された言葉には対応した方がいいですが。
また、自分が体感できない外国語の表現について「差別だから撤回しろ」と言うのは乱暴だと思っています。そういう問題は、まず同文化圏で検証されるべきではないでしょうか。
今回物議を醸したのが英語のラップ歌詞だったため、誤訳に基づいた批判もわりと見られ、外国語作品を扱うことの難しさを改めて感じました。
私は『3D』には差別の意図を感じませんし、演出としての言葉選びが成功していたかどうかは別として、選択して出されたものだと受け取っています。
複数のVer.を通じ、ポリティカルコレクトネスを考慮した形跡があるという点で、アーティストや制作側が社会的責任を意識している様子も窺えますし、これを許容することは差別の正当化にはならないと思っています。
言うまでもありませんが、これは私の個人的な意見であり、他の人の意見を否定するものではありません。ということを付け加えなくてはならないのが、この歌詞問題のセンシティブな部分ですね。
選択する権利
私は、アーティストを含む表現者には、表現の自由を最大限保証すべきだと思っていますが、それは同時に、間違える権利も恥をかく権利もあるということです。
私は、バンタンに「いいBTSでいてほしい」とはあまり思いません。
グクを世界に通用するクリーンなポップスターにしたいという願いは、彼自身が望んでいないならファンの夢想で終わります。
彼らは「BTS」としてはアイドルの枠に留まっていてくれそうですが、ソロ活動ではそれを越えた独自のカラー(品行方正ではない面も含む)を出していますし、そのことがBTSというグループの幅を広げていると思います。
グクは「I AM STILL」で「挫折も経験して強くなりたい」と言っていました。どんな経験であれ、積み重ね、自分の足で進んでいく過程自体が、彼を育てるでしょう。
この先グクがどう成長していくのかがとても楽しみですし、彼が自分の思う方向に走るだけではなく、並走してついていくARMYをチラチラ気にしてくれている様子を、とても愛しく思います。
バンタンには彼らの望む音楽をしてほしいですし、ARMYはそれが嫌になったら去ることができます。
アーティスト自身を変えたいとは思いません。選択するのも、それによるリスクや栄光を引き受けるのも、私ではないからです。
今回経緯を追ってみて、「グク(と事務所)はそうしたくてそうしたんだな」と思いましたが、それは要するに「次のソロでも同じような曲が来る可能性がある」ということなので、今からドキドキワクワクです(´- `*)
がんばれグク
全体的に、グクは「やらない後悔よりやって後悔」を地で行くタイプだと思います。本人も自虐ネタで言ってたことがあるんですが、わりとやらかす担当なんですよね。
注目度高いし行動的だし皆が半分保護者みたいになってるから、余計でしょうか。黄金マンネも大変です( ;∀;)
昔、MV撮影のビハインドで若グクが「大きくなったらタトゥーを入れたい」と言っていたことがあります。
その際、SUGAに「そんなことを言ったらARMYの皆さんが悲しむよ」とたしなめられて「皆さんなら理解してくださいますよ」と笑ってたんですよね。
若くて怖いもの知らずで、愛されてることを知ってる者の無邪気さがあってかわいかったですが、同時に、彼が実際にタトゥーを入れた時のファンダムの反応を思い起こし、ちょっと切なくなりました。
動画を見ていても、何かやらかしてはヒョン達に怒られたって反省してたり、SUGAのはちみつラジオで神妙に謝ったりしている姿が残っています。周囲が末っ子を甘やかすだけでなく、ダメなものはダメと伝えている空気感が印象的です。
最近だとバムアカウントで発言して物議を醸した後、間を置かず粛々と秋夕の挨拶をしに来たりしてて、ああ何か反省してるのかなと思いましたw(妄想)
タトゥーも口ピアスもその他諸々の事件も、全部乗り越えて今のグクがいます。『3D』事件も彼の歴史になるでしょう。
マンネがかわいすぎるので、温室で大事に育ててあげたい気持ちにもなりますが、本人がガラス突き破って走っていきたいなら仕方ないですねw
これからも新しい姿をたくさん見せてください。ファイティン!