ジェボンズのパラドックスとは?あなたの仕事が減らない理由!
今、AIが話題沸騰中だ。「AIで人間は労働から解放されて、地球環境も改善されて・・・」などというバラ色の未来を思い浮かべる人は、いないと思う。少し考えたら、それが間違っていることはわかるからだ。
AIは、大量の電力消費を引き起こす。そのため、原発を大量に新増設しなくてはならないのではないかとの意見もある。原発はCO2こそ排出しないが、ひとたび事故が起これば大変なことになる。放射性物質が拡散されてしまう。「人間の頭脳と電力のトレードオフ」なのかもしれない。
こうしたことは、実は、大昔に考えた人がいた。19世紀の経済学者ウィリアム・スタンレー・ジェボンズが提唱した「ジェボンズのパラドックス」は、技術の効率向上が逆に資源消費の増大を引き起こすことを示している。
ジェボンズのパラドックスとは、技術の進歩によって資源利用の効率が向上すると、消費量が減少するどころか増加する現象を指す。この概念は、1865年にジェボンズが著書『石炭問題』において、蒸気機関の効率向上が石炭消費の削減につながるとの期待に反し、実際には石炭消費が増加した事例から導出されたものである。
ジェボンズのパラドックスが発生するメカニズムは以下の二つの要因に基づく:
コストの低下が需要を拡大する
技術の向上により、単位あたりのエネルギーや資源のコストが低下すると、その技術の利用が広がり、結果として全体の消費量が増加する。
経済成長と新たな用途の発展
効率向上によるコスト削減が新たな市場や産業の発展を促進し、さらなる資源消費を引き起こす。
このパラドックスはエネルギー消費の分野に留まらず、労働環境やAIの利用にも適用可能であり、現代社会における技術進歩の影響を再評価する上で重要な視点を提供する。
労働環境で、どのようなロジックで効率化が進まないのか、考えてみよう。
パソコンやインターネットの普及は、業務の効率を飛躍的に向上させた。しかし、その結果として**「業務のスピードが上がり、仕事量そのものが増加する」**現象が発生している。具体例として:
PC(パーソナルコンピューター)の普及
Word/Excel/PowerPoint/Outlook(メール)によって、文書や表計算、プレゼンテーション資料を簡単に作成して、さらにメールで瞬時に情報共有できるようになった。手紙に比べて迅速なコミュニケーションが可能となった一方で、即時返信の要求が増加し、従業員の負担が増加した(メールソフトが登場する前は、社内便か、空気圧による文書送付のパイプがあったらしい。私が生まれる前の話かもしれない)。オンライン会議の普及
移動の負担が軽減された反面、会議の頻度が増加し、実質的な労働時間が延びている。
また、ITによる業務の自動化が進む中で、新たな業務(サーバーやソフトウェアの監視・管理、データ分析など)が創出され、結果として労働負担が減らないケースが多い。
結局は、人類というのは、たいして進歩していないという仮説も成り立つのかもしれない。むしろ、どんどん仕事の細分化が進んで、労働の喜びは減って、ただの「歯車」になってしまった。全ての工程を自分一人でできる「職人」は減って、プロジェクトの細分化された一部だけを担当する人が増えてしまった。そうなると、「自分の労働の意義」に悩む人は増えるだろう。
そして、自分の仕事がいつ、AIに奪われるのかおびえている人もいるだろう。失業の恐怖だ。
やはり、労働者ではなく、「資本家」にならないと、この苦しみからは逃れられない。
テクノロジーの進化は、私たち人間にとって幸福なのか不幸なのか、わからないように思える。