ケルト系民族の謎と、大学研究のあり方

「ケルト人」という言葉をご存知だろうか?世界史選択でないと、なかなかマニアックな用語かもしれない。ローマ帝国成立以前から、ヨーロッパに広く住んでいた人々をひとまとめにした言葉だ。そのため、実はかなり大雑把なくくりであり、全てのケルト人が同じような文化・言語であるわけではない。ケルトとは古代ローマで「未知の人」を意味する。そのため、「新大陸発見」や「インディアン」と同様に、本来はあまり良い意味ではない。

ローマ人による「ガリア人」という言葉もあるが、これは今のフランス周辺に住んでいたケルト人に限定された言葉であるため、「ケルト人」と同義ではない。

現在もケルト系の文化がかろうじて残るのは、フランスのブルターニュ地方、スペインのガリシア地方、イギリス(ブリテン島)のスコットランドやウェールズ、アイルランド島などかなり限定されている。おそらく、ほとんどのケルト系民族は、ゲルマン民族やローマ人(ラテン系民族)と同化してしまったからだ。「フランス人」などというが、これは、「フランスに住んでいる人」くらいの意味だろう。DNAレベルでは、ゲルマン・ケルトなどがかなり混血しており、「フランス国籍を持つ(またはフランス出身)」というくらいの意味しかない。そのため、「xx人」というのは幻想だと主張する学者もいるくらいだ。
※日本人も、古代に渡来人が来訪しているので、DNAレベルでは多様なのかもしれない。

ケルト系諸語はほとんどが言語のレッドリストに掲載されており、消滅の危機にある。言語の統一は、近代的な国家には必須のものと考えられ、国語(標準語)教育の普及のため、ケルト系諸語は消滅しかかっているのだ。今では、それに対する反省として、ブルターニュ地方でケルト系のブルトン語も学校教育で行われるなどしている。

ケルト系民族は、今でも謎が多く残されている。高校の世界史でも、古代ギリシャと古代ローマは習うが、現在のフランス(当時のガリア)やブリテン島のことは習うことはない(そもそも、解明されていないので教育のしようがないのだと思うが)。

理系だけでなく、文系(歴史学・民族学・文化人類学)でもこのように、真実に迫る学問はあるのだ。ただ、そのような学問は「カネにならない」ので、志す人は少ない。このような学問を志す場合は、相当な覚悟が必要だ。

何というか、「カネになる」かどうかで大学が評価される現状に危機感を覚える。古代のロマンとか、文部科学省の役人はどうでもいいんだろうな。古代エジプトの謎に迫った早稲田大学の吉村教授とかいたが。まだ日本が豊かだったから、そのようなニッチな学問を研究する余裕があったのだろう。今の日本は、経済成長しないといけなくて、官僚も大学も必死なのだろう。悲しいことだ。


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