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『ゴジラ』VS.『ゴジラ-1.0』(1)
『ゴジラ-1.0』を観てきました。
前回の『シン・ゴジラ』が内容的にも素晴らしく、興行的にもヒットした後なので、当然ながらその『シン・ゴジラ』の世界をベースにした続編がしばらく作られていくのだろうと思っていたのですが、ここで再度全く新しいゴジラ世界を作ったということにまず驚きました。
と言っても、この後に続編を作ることはさらに難しく思えるので、今後東宝がどのようにゴジラを展開していくのか、興味深いところです。
今作では、1954年の『ゴジラ』第一作へのオマージュが強く感じられましたので、帰宅後、自宅にあった第一作のDVDを見直しました。
第一作は現代(つまり50年代前半)を舞台にしており、『ゴジラ-1.0』はその数年前にあたる1945~47年を舞台にしています。一作目より前だから「マイナス1.0」なのかなと思っていましたが、第二次大戦で「無」になった日本がゴジラでさらに「マイナス」になったという趣旨のキャッチコピーがつけられていました。
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ゴジラ第一作は白黒映画です。今回の『ゴジラ-1.0』でまず感じたオマージュは、全体の画面の色調がかなりモノトーンに近く抑えられていることでした。終戦直後の荒廃した場面はもちろん、海の場面も破壊前の華やかな銀座の場面さえも色調が抑えられていました。これには、当時の日本のつらい雰囲気、そして神木隆之介演じる主人公敷島の感じている過去への負い目のようなもの、それを表現したという部分もあるのかもしれません。
ただ、同じモノトーンでも、第一作は夜の場面が多く、特にゴジラ登場場面は、最初に大戸島の山の上に上半身を現すところ以外はほとんど夜でした。そこは特撮(VFX)技術の違いによるところが大きいのかもしれません。当時着ぐるみのゴジラを本当に怖く見せるには、画面を暗めにつくるしかなかったのでしょう。
ゴジラの行動パターンも共通しています。南の海から来て、東京湾から上陸。晴海通りを壊して進みます。四丁目和光の時計塔、日劇、数寄屋橋、有楽町駅近くの高架線路、さらにその先の国会議事堂。
第一作では、時計塔は真っ先に破壊されますが、今回は最初素通りします。「お、壊さないんかい」と思いましたが、帰りに壊していきます。でも、上の時計部分はかろうじて残すという、匠の技を見せます。日劇については、第一作では壊していないように見えます(はっきりとはわからないです)が、今作ではしっかり壊します。ちなみに、84年の『ゴジラ』では、日劇が新しく建て替わってできた「マリオン」が壊されます。
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有楽町駅近くの高架線路で電車を襲うのも同じでした。第一作の方も、当時の特撮技術としてはかなりよくできていたと思いますが、今回、ゴジラに咥えられて宙づりになった車両(半分に千切れている)の中で浜辺美波演じる典子が手すりにぶら下がる場面。最高に怖い場面でした。
第一作も今回もなのですが、この電車の場面から国会議事堂に行くのがかなり速いんですよね。あの、山手線・京浜東北線の線路から国会議事堂までの間には、皇居のお堀、日比谷公園、霞が関の官庁街などを通って、それなりの距離があります。なので、「あれ、もう着いたの」という印象があり、その印象までそっくりでした(今回は、離れた場所から熱線で議事堂を破壊したのかもしれません)。
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それから破壊場面を実況するテレビ・レポーター。第一作では、テレビ塔の上から実況中継するのですが、このテレビ塔はどこにあるのかよくわかりません(もしかしたら愛宕山?)。今回は数寄屋橋近くのビルの屋上のように見えます。いずれにせよ、この実況中継、そんなことしないでいいから早く逃げなさい、と思います。
第一作では、その後ゴジラにこのテレビ塔が破壊されるのですが、その直前レポーターは「さようなら、みなさん。さようなら・・・」と言葉を発し、テレビ塔と運命を共にします。私は今回もこのセリフを期待していましたが、そこまではやりませんでした。ちょっと命を軽んじる印象を与えるということでしょうか。
長くなってきたので、今回はこの辺で。
次回は、ゴジラとの闘いと人間ドラマについて書きたいと思います。
(つづく)