平松 武|元外務官僚

外務省、在外公館、内閣官房に通算30年以上勤務し、21年10月退官。元内閣参事官。著書に、『「自由」が「民主」を喰う~迷走するグローバリゼーションの深層』(時事通信社)。国際関係・政治についての私見を中心に、映画、旅行、デザインなど趣味についての投稿もしていきたいと思います。

平松 武|元外務官僚

外務省、在外公館、内閣官房に通算30年以上勤務し、21年10月退官。元内閣参事官。著書に、『「自由」が「民主」を喰う~迷走するグローバリゼーションの深層』(時事通信社)。国際関係・政治についての私見を中心に、映画、旅行、デザインなど趣味についての投稿もしていきたいと思います。

最近の記事

『その着せ替え人形』も『おむすび』も

毎日放送のドラマ『その着せ替え人形(ビスクドール)は恋をする』が、ちょっと気に入っています。テレビドラマは最後まで観ないと、良いとも悪いとも言えないとは思いますが、基本的な立ち位置に好感がもてると思って観ています。(見出し画像は公式HPより引用) ストーリー 主人公は、雛人形の顔をつくる「頭師」を目指す男子高校生五条新菜(わかな)と、彼にコスチュームをつくってもらうコスプレ好きの同級生女子喜多川海夢(まりん)。 新菜は、雛人形師の祖父と二人暮らしで、自身も小さいころ

    • トランプ大統領「再」誕生~世界はどうなるのでしょう(2)

      対外関係は二の次 どこの国の選挙についても言えることですが、選挙で争われる論点の中心は内政です。それも国民の暮らしぶりに直結する経済政策についての考え方が、勝敗を決めると言っても過言ではありません。 対外的側面については、その経済政策に関連する移民問題や関税の問題には関心が注がれますが、それ以外の問題については、どんなに世界的に重要な問題であっても二の次になってしまいます。 世界の状況に多大な影響力を有するアメリカの場合もそれは同様です。そのため、決してその対外政策が支

      • トランプ大統領「再」誕生~世界はどうなるのでしょう(1)

        想定外の圧勝。 「なぜ、こんなことに」と、アメリカ以外の世界の人たちは思っているでしょう。アメリカ国民以外で喜んでいるのは、ロシアのプーチン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、そして恐らく北朝鮮の金正恩総書記だけかもしれません。(見出し画像は、トランプ候補公式HPより引用) 8年前を超える差 16年の大統領選挙で初めてトランプ大統領が選出された時も、もちろん衝撃を受けました。それでもその時は、得票率ではヒラリー・クリントン候補が上回り、大統領選制度のマジック(投票人獲得数

        • 『地下室のメロディー』と『御金蔵破り』

          全く違うタイトルの二本の映画ですが、オリジナルとリメイクです。少し前に、アラン・ドロン主演の『サムライ』('67)について書きましたが、『地下室のメロディー』('63)はそれよりも前につくられた作品。ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの共演による本作は日本でも大変話題となり、なんと早速翌年に時代劇としてリメイクされました。 (以下では、双方の結末まで言及しますので、ご注意ください。) あくまでスタイリッシュな『地下室のメロディー』 『地下室のメロディー』は、南仏のカジノの地

          模様の世界(19)~日本・新潟県弥彦村

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          『幻の光』~光と影と静けさと

          是枝裕和監督の劇場映画デビュー作『幻の光』を観ました。能登を舞台にしているということもあり、少し前から復興支援として劇場で再上映されていましたが、私は国立映画アーカイヴ分館での上映会で鑑賞しました。(画像は公式HPより引用) ストーリー 結婚して間もなく、愛する夫を自殺同然の事故で失った主人公ゆみ子の話です。子供も生まれ、本当に幸せの絶頂の中、全く何の前触れもなく突然旅立ってしまった夫。「なぜ?」という気持ちを抱き続け、言葉数も少なくその後の人生を生きる彼女。 数年後に

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          『サムライ』と『侍』

          アラン・ドロンが亡くなりました。50年代末から生涯映画界で活躍していましたが、特に60年代から70年代前半に多くの名作に出演しました。世界のどこよりも日本で大人気だった彼は、日本では美男子の代名詞にもなり、テレビCMにも出演していました。私くらいの年齢の人は、まずCMで彼を知ったという人も多いと思います。 アラン・ドロンのことを語り始めるとキリがないのですが、今回は私を含め、多くの映画ファンが傾倒する映画『サムライ』('67)について、三船敏郎の『侍』('65)とも比較しな

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          教会のある風景(7)~スイス・フルカ峠

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          石破自民党新総裁誕生~「新しい資本主義」の復活を期待

          自民党新総裁に石破茂元幹事長が選出されました。自民党に対する信頼度が落ちている中、国民的人気の高い石破氏が選ばれたことは順当なところなのでしょう。石破氏がこれまで、数々の閣僚や党幹事長を務めながらも、政権中枢から一定の距離をとっていたことも、刷新感を求める国民の声に応える総裁たりうるとして選出につながったのだと思います。(見出し画像は、自民党HPより引用) 石破氏が、新総裁・新総理として実現しなければならないことは、多々あります。特に安全保障に強いという印象の石破氏ですが、

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          『新宿野戦病院』~それな!

          宮藤官九郎脚本のドラマ『新宿野戦病院』が最終回を迎えました。いつもながらのクドカンのユニークな構成とユーモアのセンスで、とても楽しませてもらいました。(見出し画像は公式HPより引用) おんぼろ病院が舞台 新宿歌舞伎町のどこかにある小さな病院が舞台。独立したビルだけれども、とにかく小さくてボロい。更地にして駐車場にした方が儲かるくらい経営はやばい。外科医は、半分アル中の院長(柄本明)のみ。そこに米国籍の元軍医のヨウコ(小池栄子)が迷い込んで、救命のヘルプをすることに。 色

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          世界の水辺から(7)~日本・南会津

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          『アキラ』~人類の文明を発展させ崩壊させるものとは(3)

          難解なエンディング 『アキラ』のエンディングは、やや難解です。 ネオ東京の崩壊の後、生き残った金田がその友人に言います。 「(鉄雄は)行っちまった。あの三人も。アキラも」 (鉄雄は死んだのかと聞かれ、) 「どうかなあ。きっと・・・」 瓦礫の中をバイクで走る金田たち。 三人の老少年少女の声が聞こえます。 「でも、いつかは私たちにも」 「もう、始まっているからね。」 その後、画面は真っ白になり、その中心から、黒い小さな点が幾重にも円形に広がり、中心から手前に向かって何本も

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          『アキラ』~人類の文明を発展させ崩壊させるものとは(2)

          偶然の一致~東京オリンピック ’88年の映画『アキラ』は2019年を舞台にしており、翌20年には東京オリンピック開催が予定されていることが描かれています。そして鉄雄と「アキラ」による破壊により、明らかに東京オリンピックは開催できなくなります。 現実世界において、東京オリンピックの20年開催が予定されていたのが、コロナ禍により延期されたことは、興味深い偶然の一致です。 コロナ禍による人間社会への打撃を、「アキラ」や鉄雄による破壊とパラレルにとらえ、映画『アキラ』がこれを予

          『アキラ』~人類の文明を発展させ崩壊させるものとは(2)

          『アキラ』~人類の文明を発展させ崩壊させるものとは(1)

          大友克洋のアニメ映画『アキラ』を久しぶりに再見しました。第三次世界大戦後の東京の発展と退廃。それを切り裂くように走り抜けるバイクのテールランプが、最高にクールな印象を残す映画です。 (以下は、コミック版ではなく映画版についての記述です。結末まで言及しますので、ご注意ください。) ストーリー 2019年、第三次大戦後31年を経たネオ東京。高度に発展した都市社会で、反政府ゲリラと軍の衝突が続き、不良少年たちはバイクで夜の街を暴走しています。そんな不良少年の金田と鉄雄は、事故を

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          模様の世界(18)~ヨルダン・ペトラ遺跡

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          「ポピュリズム」とは何か?

          最近、各国政治の状況について、改めて「ポピュリズムの高まり」という言い方がされることが多くなりました。この「ポピュリズム」という言葉、「大衆迎合主義」と訳されることが多いようですが、「大衆に迎合する主義」と「民主主義」はどう違うのでしょうか? 「ポピュリズム」の起源と民主主義 「民主主義」というのは、民意に基づいて政治が行われる体制、ないしそうあるべしという考え方です。そうであれば、大衆の意見を政治に反映させていこうという「ポピュリズム」は、「民主主義」と同じ意味なのでは

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