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【英文法 重箱の隅】自動詞+X〈前編〉

実用から離れて、英文法そのものに対し関心を寄せている読者向けの内容となっています。一匹の猫の個人的な興味探求の記録としてお読みいただければ幸いです。

記事のタイトルを「自動詞+X」としたのは、自動詞に後続する要素について考えてみたいと思ったからだ。ここで「要素」というのは、いわゆる「文の構成要素」のことで、「主語」「述語動詞」「目的語」「補語」「修飾語」がある。このうち、述語動詞として用いられる自動詞に続くのは補語と修飾語なので、この二つの用語について、改めてその定義を学習用英英辞典によって確認することから始めよう。

最初に、補語に相当する complement について各辞典による説明を引用する。

a word or phrase that follows a verb and describes the subject of the verb

https://www.ldoceonline.com/ 

a part of a clause that usually follows the verb in English and adds more information about the subject or object

https://dictionary.cambridge.org/ 

In grammar, the complement of a link verb is an adjective group or noun group which comes after the verb and describes or identifies the subject.

https://www.collinsdictionary.com/ 

a word or phrase, especially an adjective or a noun, that is used after linking verbs such as be and become, and describes the subject of the verb

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ 

大まかに言えば、complement とは動詞に後続して主語(および目的語)について説明する(describe)語句ということになる。細かく見ると、’adds more information about the subject’ や ‘identifies the subject’ となっているものもあるが、大きな/重要なちがいとは言えないだろう。いずれにせよ、上の定義は、日本の学習英文法による補語の説明と変わらない。

補語になるものとして形容詞(句)や名詞(句)に言及している説明もあるが、多くの日本人学習者にとって、これも既知のものだろう。一方、補語が後続する動詞を ‘link verb’ や ‘linking verb’ と記しているものがある。これは日本語では「連結動詞」とも訳される動詞の種類を表す用語だが、よく知られたものとは言えないので、linking verb についても定義を確認する。

a verb that connects the subject of a sentence with its complement,

https://www.ldoceonline.com/ 

a verb that connects the qualities of an object or person to that object or person:

https://dictionary.cambridge.org/ 

A linking verb is a verb which links the subject of a clause and a complement.

https://www.collinsdictionary.com/ 

a verb such as be or become that connects a subject with the adjective or noun (called the complement) that describes it

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ 

これについてもいずれの説明も内容は同じで、主語と補語をつなぐ/結ぶ(connect, link)動詞としている。4番目の定義には、代表的な動詞として be と become が挙がっている。

次に、学習用英英辞典における修飾語 modifier の説明を見てみよう。

a word or group of words that gives additional information about another word. Modifiers can be adjectives ( …), adverbs (...), or phrases (...).

https://www.ldoceonline.com/ 

a word or phrase that is used with another word or phrase to limit or add to its meaning

https://dictionary.cambridge.org/ 

A modifier is a word or group of words that modifies another word or group.
A word or group of words that modifies another word describes or classifies something, or restricts the meaning of the word

https://www.collinsdictionary.com/ 

​a word or group of words that describes a noun phrase or limits its meaning in some way

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ 

modifier の働きに関する記述を上から順に抜き出してみると
’gives additional information’ (情報を追加する)
‘limit or add to its meaning’(意味を限定/追加する)
‘describes or classifies …, or restrict the meaning’(説明/分類する、意味を限定する)
‘describes … or limits its meaning’(説明する、意味を限定する)
とある。整理すると、他の語や句の意味を説明したり限定したりするものということになるだろうか。これも、日本の学習英文法による説明などでよく見かけるものだ。

In some descriptions of grammar, only words that are used before a noun are called modifiers.

https://www.collinsdictionary.com/ 

実は、3番目の定義にはこのような一文が添えられている。「文法解説の中には、名詞の前で使われる語のみを modifiers と呼んでいるものもある」。また、4番目の定義にも「名詞句を説明する語や語のグループ」と記されている。このような説明を読んで、少し違和感を覚える方もいるのではないだろうか。

日本の学習英文法によると、「修飾語」は形容詞的な語句と副詞的な語句に二分される。それに対して、一部の英英辞典は modifier について、名詞句を説明する(=形容詞的な)語句に限られる(こともある)と言っているのだ。それでは、副詞的な修飾語の方は何と呼ばれているのだろう?modifier と似た意味の文法用語に adjunct がある。「付加語」と訳されているようだ。

an adverbial word or phrase that adds information to another part of a sentence

https://www.ldoceonline.com/ 

In grammar, an adjunct is an adverb or phrase that gives extra information in a sentence.

https://dictionary.cambridge.org/ 

In grammar, an adjunct is a word or group of words which indicates the circumstances of an action, event, or situation. An adjunct is usually a prepositional phrase or an adverb group.

https://www.collinsdictionary.com/

an adverb or a phrase that adds meaning to the verb in a sentence or part of a sentence

https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ 

同じように、働きに関する説明を拾い出してみると
’adds information’, ‘gives extra information’, ‘indicates the circumstances of an action, event, or situation’, ‘adds meaning’
とあって、modifier のそれと大した変わらない。見逃せないのは adjunct になる語句についての記述だ。
’an adverbial word or phrase’, ‘adverb or phrase’, ‘a prepositional phrase or an adverb group.’, ‘an adverb or a phrase’
というように、いずれにも’adverb(ial)’ という語が出てくる。adjunct とは、日本人学習者にとって見慣れた用語で言えば副詞(句)を指しているらしい。

整理しておこう。modifier とは広い意味では形容詞的または副詞句的な修飾語句を指すが、形容詞的な修飾語句に限定する場合もある。一方、副詞的な修飾語句には adjunct を用いることもある。

さて、前置きが少し長くなったけれど、ここからが本題。自動詞に名詞が補語として後続する[自動詞+名詞]構文の例から見ていきたい。ただし、学習英文法書のSVCの解説においてよく目にする典型的な動詞は取り上げないことにする。

動詞に名詞が直結する[動詞+名詞]構文の場合、その名詞は目的語または補語として働く。そのため学習用英文法書などにはその識別法が記されている。すなわち、主語となる名詞句(A)と動詞に後続する名詞句(B)との間にイコールの関係(A=B)が成り立つかどうか、A=Bならば「Bは補語」である、というもの。

ここでのA=Bとは、BがAの性質や状態について述べたり、Aが何であるかを示したりすること、要するにBがAの説明になっていることをいう。これは意味関係にもとづく識別法と言えるだろう。そして、意味上の区別の常として(自動詞と他動詞)、意外なことに目的語と補語との境界も思われているほど明瞭なものではないようなのだ。


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