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【英文法 重箱の隅】他動詞+再帰代名詞と自動詞

実用から離れて、英文法そのものに対し関心を寄せている読者向けの内容となっています。一匹の猫の個人的な興味探求の記録としてお読みいただければ幸いです。

英語の代名詞には、me, you, she といった人称代名詞とは対照的に、myself, yourself, herself といったいかにも重い形をした代名詞があって、再帰代名詞と呼ばれている。この再帰代名詞の用法の一つが動詞(または前置詞)の目的語になること。

1-a.  Agnes looked at herself in the mirror.
1-b.  Agnes looked at her in the mirror.

https://dictionary.cambridge.org/grammar/british-grammar/ 

(1-a) と (1-b) とでは、アグネスの視線の先にある対象が異なる。(1-a) では鏡に映った自分の姿に目を向けたのであり、(1-b) では彼女とは別の女性の姿に目を向けたと解釈されるのがふつうだ。

一般的な説明によると、再帰代名詞は、動詞の主語と目的語が同じ人またはものを指すときに、その目的語として用いる。「再帰」ということばは、主語の行う動作が(他者ではなく)自分自身に向けられる=自分の動作が自分に帰ってくることを表しているのだろう。動作の対象が他ならぬ自分である=「動作がその主体自らにおいて完結する」のだから、[動詞+再帰代名詞]という構造は意味的にはむしろ自動詞に近いと言える。

2.  That knife’s extremely sharp! Mind you don’t cut yourself.
3.  Marie still blames herself for Patrick’s death.
4.  ‘Kay, this is Steve.’ ‘Yes, I know—we've already introduced ourselves.’

https://www.ldoceonline.com/ 
https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/ 

(2)  ‘cut yourself’ 「自分の皮膚に刃物などで切り傷をつけて出血する」
(3)  ‘blames herself’ 「自分を責める」(いわゆる自責の念)
(4)  ‘introduced ourselves’ 「自己紹介する」

これらの例で[動詞+再帰代名詞]という形はいずれも「自分(自身)を[に]〜する」という日本語に相当すると言えるが、この[動詞+再帰代名詞]という形が現れるのはこのような場合にとどまらない。むしろ、以下に見るように、「自分(自身)」という訳語が表面に出ないことが多い(分析的に考えると、「自分を[に]〜する」と解することは可能)。


自動詞的な意味を表すのに再帰代名詞を伴う例

5.  I don't think Marie is enjoying herself very much at school.
6.  The kids amused themselves playing hide-and-seek.
7.  I wanted to take two weeks' holiday, but had to content myself with one because the office was so busy.
8.  He has exerted himself tirelessly on behalf of the charity.
9.  Don't flatter yourself, Peter. She's like that with everyone.
10.  Tom seated himself opposite her and tried not to stare.

https://dictionary.cambridge.org/ 
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まず、他動詞としての用法しかないために、自動詞的な意味を表すために[動詞+再帰代名詞]の形をとる例。

(5) の enjoy は通例、他動詞として用いる動詞なので、「楽しかった?」のつもりで ‘Did you enjoy?’ と言うのは誤りで ‘Did you enjoy it?’ などが正しい。ただし、くだけた話し言葉では、飲食物などをすすめるときに ‘Here’s your pizza. Enjoy!’ (さあ/どうぞ/召し上がれ)のように言うこともある。文中の ‘enjoying herself’ は「楽しむ」こと。

(6) の ‘amused themselves’ は同じ「楽しむ」でも、退屈しないように楽しく時を過ごすことなので、「気を紛らわせる」とか「退屈をしのぐ」に近い。

(7) の ‘content myself’ は「満足する」ことだが、まさに望み通りのものではなくてもしかたがないと思って受け入れることなので、「甘んじる」に近い。

(8) の exert 自体は「力などを行使する/働かせる」こと。目的語として再帰代名詞を用いた ‘exerted himself’ となると「肉体的あるいは精神的に懸命に努力する」ことを表す。

(9) の flatter は「お世辞を言う」「おだてる」「へつらう」といった日本語に相当する動詞なので、それが自分に向けられる ‘flatter yourself’ は「うぬぼれる/いい気になる」こと。

(10) の動詞としての seat は「人を座らせる/座席に案内する」という意味であることから、再帰代名詞を目的語に用いた ‘seated himself’ は「座る」という意味になる。なお、受動形を用いた ‘Please be seated.’ は ‘sit down’ の丁寧表現として使われるし、‘Please wait to be seated.’(ご案内するまでお待ちください) はレストランなどの掲示で見かける表現である。

慣用表現として扱われる例

11-a.  "Might I have some more bread?" "Please, help yourself!"
11-b.  "May I help myself to some more food?" "Yes, of course."
12.  If I had applied myself, I think I could have passed those exams.
13.  His speech was dreadful - he just kept repeating himself.

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https://dictionary.cambridge.org/ 

次は、[動詞+再帰代名詞]の慣用表現として扱われることが多い例。

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