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いだてん噺

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2024年10月の記事一覧

[いだてん噺]二十三日間05(1821文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて6日目、8月9日の午後ー。

 大会の競技プログラムは、おおよそこのようなものだと、大会委員長のドクトル・リリエの元に赴いていた黒田乙吉が、ホテルに帰って絹枝に報告した。

[二十七日]
 入場式、
 百ヤード走、
 二百五十メートル走、
 円盤投、
 ボール・ゲーム(スウェーデン対ユーゴ)、
 走高跳。
 
[二十八日]
 百ヤードハードル、
 走幅跳、
 槍

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[いだてん噺]二十三日間04(1821文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて5日目、8月8日ー。
 この日は、午後1時までの練習を許可されたため、絹枝は午前11時から練習に出かけている。

 800mの軽いウォーミング・アップを試み、ちょっと苦しいなという感想がしたという。
 そしてスタートの練習に入った。

 この日は日曜日であったからか、いつも通る森林公園は人でいっぱいになっていたと絹枝は記している。

 当時、日本では日曜に家族そ

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[いだてん噺]二十三日間03(1513文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて3日目の8月6日ー。
 この日は、午後4時から練習に出かけている。

 スウェーデン語のスタートに使われるフレーズにも慣れて来たことが自伝に記されている。

 今大会の練習で初めて取り込んだ円盤投げについては、『少しずつ入念に研究的に』取り組みを始めている。
 また最後に、『マッサージのおかげか練習の疲れも出ない』と記されていた。
 『脚の筋肉がはなれてしまう程

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[いだてん噺]二十三日間02(1513文字)

  スウェーデンのエテボリーに着いて2日目の8月5日ー。

 朝9時に通訳のマルチソンが、絹枝とマネージャーの黒田乙吉の写真が載っている新聞を持ってきた。

 新聞に写真が掲載されたためか、絹枝は朝10時頃に日本領事館を訪ねていているが、自伝には『町を歩くと人が見て困る』と記されている。
 『中には「あ、あれがヤポン(=日本)のチャンピオンか」と言っているのが耳に入ることも度々ある』とも記されてい

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