欲求を認識させない教員は要らない

人間は様々な欲求をもっている。
しかし、自分が今何を欲しているのか、
自分はこれまで、どんな欲求をどのように満たしてきたのか、
正確に認識することは難しい。

『認識する』ということを、ここでは『正しく言語化する』と定義しておく。

自分が欲していると思ってたことを達成しても、満たされないこともあるし、ふとした気付きによって思いがけず欲求が満たされることもある。

それくらい、自分の欲求を正確に認識することは難しい。

ほとんどの子どもたちは、自分の欲求を正確に認識していない。

それは、現代の子どもたちが欲求を強く感じずに育ってきたからである。
そしてその度合いは、社会の成熟によって徐々に強まってきたと言える。

人間性心理学の生みの親と言われている、アメリカの心理学者であるマズローの欲求5段解説によれば、人間の欲求は5段のピラミッドの階層のように構成されており、
最も下の階層に『生理的欲求』
その上に『安全欲求』
その上に『社会的欲求』
その上に『承認欲求』
一番上の階層に『自己実現欲求』
があると言われている。

その昔、毎日お腹が満たされて、屋根の下、温かい布団でぐっすり眠れれば満たされた生理的欲求や安全欲求が、社会の成熟により『当たり前』となった世代では、欲求としては認識できなくなり、それだけで満たされる感覚は薄れてしまった。

そのため、人々は更に上位の欲求を強めることとなった。
それが『社会的欲求』である。
社会的欲求とは、集団に所属したい、仲間を得たいという欲求だ。

しかし、この欲求も現代の子どもたちにおいては、教員や保護者が孤立することのないように配慮することで、ほとんどの子どもたちが強く意識せずとも当たり前に友達や仲間と楽しく生活している。
そして現代において、この欲求が満たされない者の多くは、いじめや不登校という問題に直面している。

友達や仲間が当たり前となった者たちは、更に上位の欲求を強めた。
それが、『承認欲求』である。

承認欲求には2種類あり、
褒められたい、認められたいの『他者承認欲求』と、自分自身を認めたいという『自己承認欲求』だ。

現代の子どもたちは、これでもかと褒められて育ってきたため、『他者承認欲求』はある程度満たされている。
おそらく、これが満たされてない者は『かまってちゃん』とか『メンヘラ』とか言われているのだろう。

現代の子どもたちが強く認識すべき欲求は『自己承認欲求』である。
だか、それを言語化して理解させられる教員は少ないだろう。

なぜなら、教員たち自身も同じ状況だからだ。
自分で自分を認めたいが、どうしたら良いか分からないのだ。
こんな自分をどうしたら好きになれるか、認められるか、自信をもてるか、分からないのだ。

だから、現代の子どもたちが直面している問題を正確に捉えることができない。

何を欲しているのか、それをどうしたら得られるか認識させることができれば、子どもたちも真っ直ぐ進めるのだと思う。

いいなと思ったら応援しよう!