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水産業の仕組み(SDGs14.4その6)
獲っていい魚の量に制限をかけてしまえば確かに魚の目からしたら海は豊かになっていくでしょう。でも今まで好きなだけ魚を売りさばいていた人からしたら死活問題です。実際漁業就業者の平均年収は238.4万円しかなくなってしまいました。(※1)背に腹は代えられない。ズルをしてでも魚を売るような人もでてくるわけです。つまり水揚げしたとカウントしないで、売りさばいてしまうといったことが起きているのです。でもこの監視社会の現代で、そんなことができるわけがないと思うかもしれませんが、それができてしまうし、行われているのです。
日本の水産業の仕組みは古くから確立されていて、その仕組みは現在の私たちの社会でもしっかり機能しているのです。例えば回転すし屋に行ったとします。目の前を流れている魚がどのようにここまで来たか経緯を見てみることにしましょう。まず地元の漁師(生産者)に釣られるところから始まります。その漁師さんは自分の港(例えば、漁協)で水揚げします。そこで港で待っている人たち(出荷者)が発泡スチロールなどの箱に詰めて市場(正確には産地卸売市場)へ発送します。到着した市場ではセリ人が釣られた魚を余すことなく業者(仲買)へ売りさばきます。これがよくテレビとかで見かけるセリ(競り)です。そしてセリで魚を手に入れた業者はさらに自分の地元の市場(正確には消費地卸売市場)に持って行っていきます。その地元の市場のセリ人が魚をさらに地元の業者(仲卸)へ売りさばきます。そしてこの地元の業者はお得意先の魚屋や飲食店(買出人)へ売りさばきます。そして料理人などに調理されておいしそうにぐるぐる回っているわけです。
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さて問題です。この魚が私たちのもとに来るまで、何人の手にわたってきたでしょうか?答えは8人です。でもこれは役回り的な人の数で正確には出荷人でも数十人いるところもありますし、運送業者なども入っていません。魚を食べるだけでも、これだけ多くの人がかかわっているのです。それだけ大事にされている魚ですが、その工程が多い分、スキもうまれてしまいます。つまりどこかの時点で無報告で水揚げされた魚が紛れ込んでいる可能性があるのです。買出人に届くころには正規のルートで買っているのでどこで紛れ込んだのか、それがルールにのっとって入ってきた魚なのかわからない状態になっているのです。これが大問題になっているのです。
報告もしないなら表に出てくるわけがないのに、なんで無報告漁業がおこなわれているなんて言えるんだろうと思うかもしれません。でもそれがわかってしまうのです。答えは簡単です。水揚げした魚の量と消費した魚の量が全然違うんです。その差は2600万トン。金額でいうと2兆5845億円にも及ぶとされています。つまり、世界でとれている魚の10匹中1匹は身元不明の魚ということになります。ただでさえ少なくなっている魚が知らないところで獲られて、そして私たちのもとへ正しいルートとしてやってきて、しっかりお金となっているのです。
※1、農林水産省 漁業経営統計調査 「令和2年漁業経営統計調査結果 統計表」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/gyokei/index.html
※2、WWF IUU漁業について
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/282.html